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[P41-1]蛍光マーキングクリップ(FMC)を用いた術前マーキングの有用性と安全性の検討 ― 点墨法との比較による後方視的解析 ―

仕垣 隆浩, 髙松 正行, 高木 健太, 菊池 麻亜子, 古賀 史記, 藤吉 健司, 吉田 直裕, 大地 貴史, 吉田 武史, 主藤 朝也, 藤田 文彦 (久留米大学医学部外科)
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背景:大腸癌手術において病変部位を正確に同定することは、腸管切離ラインや郭清範囲の決定において重要である。術中に病変の位置を同定する方法としては、術中内視鏡や点墨法が一般的に用いられているが、術中内視鏡は手間と人手を要し、点墨法は腹腔内散布や膿瘍形成などの偶発症を伴う可能性がある。当院では2023年よりクリップの先端に蛍光樹脂を使用し、近赤外光のカメラで管腔内のクリップを可視化できる蛍光マーキングクリップ(fluorescent marking clip:FMC)を導入している。
目的:術前マーキングが必要となる症例の臨床病理学的因子を明らかにするとともに、FMC施行群と従来の点墨施行群を後方視的に比較し、FMCの安全性および有用性を検討する。
方法:2023年1月-2024年7月に当院で横行結腸から直腸Raの原発性大腸癌に対し、FMCまたは点墨による術前マーキングが実施された44例(FMC群21例、点墨群23例)を対象とした。FMCは術前日に2個留置している。術中に病変部位の同定ができなかった症例の臨床病理学的因子について検討した。また、FMC法と点墨法の視認性および有害事象の発生状況を比較検討した。
結果:マーキングを施行した44例中、術中に病変部位の同定ができなかった症例は33例(75%)。病変の同定が困難であった症例は、環周率1/3以下の症例に多かった(p=0.028)。性別、BMI、腫瘍深達度、術前リンパ節転移の有無などの他の臨床病理学的因子との間に有意差は認めなかった。術中にマーキングを視認できた割合は、FMC群で95.2%、点墨群で82.6%と高率であったが、両群に有意差はなかった(p=0.35)。有害事象については、点墨群で3例(13.0%)の腹腔内散布を認めたが、FMC群では有害事象は確認されなかった。
結語:環周率が1/3以下の症例では、腹腔内から病変部位を同定することが困難であり、術前マーキングが必要であると考えられる。FMC法は点墨法と同等の視認性を有しつつ、有害事象のリスクが低く、簡便かつ安全な術前マーキング法として有望である可能性が示唆された。