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[P6-2]盲腸に限局した動脈性腸管虚血の2例
小林 豊, 梅谷 有希, 加藤 真司 (医療法人医仁会さくら総合病院消化器外科)
【はじめに】腸間膜の動脈閉塞は上腸間膜動脈血栓症を代表的に、広範囲な腸管虚血を来たす腹部救急疾患としてしばしば遭遇する。上腸間膜動脈血栓症はその本幹の閉塞による広範囲な小腸の壊死を来たすことが多いが、盲腸に限局した稀な動脈閉塞を2例経験したので報告する。【症例1】78歳、女性。突然発症の腹痛を主訴に救急搬送され、CTで盲腸から上行結腸に異常拡張があり、CT所見と増悪傾向の腹部所見から緊急手術を施行した。境界明瞭に壊死した盲腸を確認して、緊急回盲部切除術を施行し、術後は軽度の創部感染を来した以外は経過良好であった。【症例2】73歳、男性。突然発症の腹痛を主訴に近医を受診し、上行結腸がんによる腸閉塞を疑われて当院紹介受診となった。 当院の造影CTにても盲腸の著明な拡張を認め、上行結腸がんによる腸閉塞を疑った。腹痛は増悪傾向で発熱も伴ってきたため、緊急手術を施行した。境界明瞭に盲腸は壊死しており、上行結腸がんを疑っていたことから、右半結腸切除術を行った。術後は合併症を認めることなく経過した。【考察】腸管虚血は静脈性・動脈性・非閉塞性に分類されるが、それぞれ臨床所見や画像所見や術中所見で区別される。自験例では虚血の範囲は盲腸に限局した稀な症例であり、境界が明瞭であったことから非閉塞性腸管虚血ではなく、動脈閉塞による腸管壊死である、と断定した。2例とも盲腸の全層壊死を伴っており、腹部症状も重いことから、開腹手術を行なっているが、回腸の拡張も伴っていたため、良好な視野での短時間手術にするためには開腹がやむを得ないと考えた。文献的に検索し得た報告例に自験例2例を加えた考察を加える。【結語】盲腸に限局した腸間膜虚血の稀な2例を経験した。