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[P9-5]高齢UCで術後カンジダ敗血症の合併のため診断に苦慮した重症ニューモシスチス肺炎の一例

鳥谷 建一郎1, 木村 英明1, 今西 康太1, 本間 実1, 前橋 学1, 栗村 一輝1, 春山 芹奈1, 中森 義典1, 国崎 玲子1, 諏訪 雄亮2, 小澤 真由美2, 遠藤 格3 (1.横浜市立大学付属市民総合医療センターIBDセンター, 2.横浜市立大学付属市民総合医療センター消化器病センター, 3.横浜市立大学附属病院消化器・腫瘍外科学)
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背景:高齢者の潰瘍性大腸炎(UC)で肺炎は主な術後死因であり、特に急性重症潰瘍性大腸炎(ASUC)で免疫抑制中はニューモシスチス肺炎(PJP)などの日和見感染に注意が必要である。ASUCを発症した高齢患者が術後にカンジダ敗血症を合併し、PJPの診断が困難となった症例を経験したため報告する。
症例:症例は70歳の男性。血便、下痢、腹痛を主訴に近医入院し、感染性腸炎が疑われ抗菌薬治療を受けたが改善せず、第 14 病日に当院へ転院した。転院 2 日目に S 状結腸内視鏡検査を施行しASUC と診断、ステロイド療法と顆粒球除去療法を施行した。転院 22 日目に内科治療抵抗性 UC と判断し、腹腔鏡下結腸亜全摘術、回腸人工肛門造設術を施行した。術後9日目に発熱を認め、カテーテル関連血流感染(CRBSI)を疑い,カテーテルを抜去しCefazolinを開始。術後12日目、CRBSIによるCandida parapsilosis敗血症と診断しfluconazoleを投与した。CTで両肺の結節影を認め,敗血症性肺塞栓症を疑った。一時的に軽快したが、術後18日目に発熱と低酸素血症を認め、酸素療法を開始。血清B-D-glucan値の上昇がみられ,fluconazole耐性真菌を考慮し、amphotericin Bに変更した。術後19日目のCTで両肺に網状影とすりガラス状陰影を認め、敗血症性肺塞栓症ではなく、PJPを疑いtrimethoprim-sulfamethoxazoleを開始。気管支洗浄検査を施行した。術後 21日目に低酸素血症が悪化し、人工呼吸器を開始。術後25日目に気管支肺胞洗浄の結果からPJPと確定診断し、大量プレドニゾロン療法を開始した。術後 27日目に人工呼吸器から離脱し、術後 54日目に自宅退院。術後10ヵ月で残存直腸切除術、回腸嚢肛門管吻合術を施行し、術後1年6ヵ月時点で生存中である。
結語:ASUCを発症した高齢者のB-D-glucan値の上昇を伴う呼吸器系の異常は、カンジダ敗血症の治療中であっても敗血症性肺塞栓症やカンジダ肺炎だけでなくPJPの合併を考慮する必要がある。