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[PD2-3]V-Y Graft using plastic surgical technique for anal stenosis

Toshiharu Mori1, 田中 香織1, 山田 英貴2 (1.Mori Surgical Clinic, 2.山田外科内科)
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【はじめに】裂肛は肛門上皮の裂創で慢性化して肛門上皮が瘢痕化すると高度の肛門狭窄となる場合がある.全周性肛門狭窄に対する治療には手術しかなく, Sliding Skin Graft(SSG)やV-Y Graft(VYG)といった形成外科的アプローチを有する手技が必要になる.肛門科領域で行われるSSGではgraftの皮切は真皮がわずかに残る程度が良しとされ,そのgraftもなるべく小さめにしようとする傾向が強い.本来graftは血流確保のため極力大きめにすることが基本とされる.また,graftがslidingするためには真皮を完全に切離する必要があり,さらに十分にslidingさせるには肛門括約筋の筋膜まで切離を加える必要がある.従来のSSGでは直腸粘膜皮膚縫合部が部分的なホワイトヘッド肛門の形となるため,力みなどにより将来的に縫合部が下垂して直腸粘膜脱を来す恐れがある. VYGでは縫合したYの脚部分がgraft部分を支えるような形になり,直腸粘膜皮膚縫合部が下垂せず直腸粘膜脱となるのを防ぐことができる.現在当院では全周性肛門狭窄に対する肛門拡張術にはVYGを第一選択としている.【手術】肛門6時の瘢痕狭窄部の肛門上皮を切開して皮下の瘢痕組織や硬化した肛門括約筋を可及的に切除し二横指まで肛門を拡張したのち直腸粘膜と肛門上皮を縫合する.同部外側の肛門周囲皮膚に可能な限り大きめのV字切開を加えてgraftを作り,肛門括約筋筋膜まで切離してY字型に縫合閉鎖しgraftを肛門管内へslidingさせる.【手術成績】2019年8月より2025年1月までに慢性裂肛による肛門狭窄でVYGを10例に行った.全例で狭窄は解除でき,肛門の変形や瘢痕を形成した症例はなかった.1例で皮膚縫合部の哆開を認めたが二次的に治癒した.【まとめ】形成外科的なアプローチで行うVYGは術後合併症が少なく,長期的な合併症防止にも有用な術式であると考えている.