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[PD2-7]Treatment for anal fissures and anal stenosis
Kosuke Okamoto, 紅谷 鮎美, 河野 洋一, 佐井 佳世, 米本 昇平, 酒井 悠, 松島 小百合, 鈴木 佳透, 小菅 経子, 松村 奈緒美, 下島 裕寛, 宋 江楓, 國場 幸均, 宮島 伸宜, 黒水 丈次, 松島 誠 (Matsushima Hospital Coloproctology Center)
裂肛・肛門狭窄の診断は,問診,視診,肛門指診,肛門鏡検査などによりに行う.急性裂肛による強い持続的な疼痛を伴う症例は,内肛門括約筋の強度な痙性収縮を来たし,通常の診察は困難なため,局所麻酔剤入りゼリーの塗布あるいは腰椎麻酔下での診察をする.保存的治療は,食物繊維の摂取の勧め,軟便剤,緩下剤の投与と注入軟膏の投与を行う.また温水洗浄便座の使用は,裂肛の悪化や治癒を遷延させるため,使用制限を勧めている.急性裂肛では,器質的な肛門狭窄は少なく,麻酔下で緩徐なフィンガーブジーによる肛門拡張術が有効な治療手段となる.慢性裂肛で,潰瘍,肛門ポリープの形成,肛門狭窄による出血や疼痛が保存的治療で無効な症例を手術適応としている.肛門計の測定には,示指による感覚は術者間で誤差を生じるため,肛門ブジー,メジャー付きの有柄肛門鏡による測定を行なっている.裂肛は,痔核に随伴する例,痔瘻が併存する例も多い.2021年1月から2022年12月の間で,裂肛単独272例,痔核の併存799例,痔瘻併存147例,痔核と痔瘻併存228例あった.慢性裂肛では内肛門括約筋の過緊張を示す例が多く,当院では肛門内圧検査を行い,最大静止圧(maximum resting pressure;以下 MRP)を術式選択の指標の一つとしている.主な術式は用手肛門拡張術(以下AD),裂肛切除,肛門括約筋切開術,側方内括約筋切開術(lateral subcutaneous internal sphincterotomy;以下LSIS),皮膚弁移動術(sliding skin graft;以下SSG),同時に肛門ポリープ切除,皮垂切除などである.MRP高値例では,AD,LSIS,SSGに括約筋切開術を加えると,MRPの正常化が図られ再発予防につながる.一方,MRP低値を示す例も存在し,その場合は内括約筋の過度な切開は機能低下を招く恐れがあるため,より慎重さが求められる.なお肛門の手術では環状の瘢痕を残さない方が良いと考えられ,裂肛切除部の縫合閉鎖は,できるだけ縫合線が体軸(長軸)方向となるように,痔核結紮切除術(LE)に準じた縫合になるように心がけている.今回,当院の裂肛の外科治療を中心に,術後のアンケートによる患者の満足度などを含め,術式や治療成績を報告したい.