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[R10-3]直腸癌術後の長期的排便機能障害の後方視的検討

南原 翔1,2, 松井 信平1, 野口 竜剛1, 坂本 貴志1, 向井 俊貴1, 山口 智弘1, 秋吉 高志1 (1.がん研究会有明病院大腸外科, 2.九州大学病院消化器・総合外科)
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はじめに: 直腸癌に対する低位吻合では術後に頻便・便失禁・分割便・便意切迫など排便障害としての低位前方切除後症候群(LARS)をきたす。その発生頻度は80-90%と頻度は高くQOLに強い影響を及ぼすが、認知度はあまり高くない。当院で手術を施行した直腸癌患者の排便機能について後方視的に検討しリスク因子を抽出した。
対象: 2018年6月〜2022年11月までに当院で手術を施行した直腸癌患者を対象とした。質問票を用いてLARSスコア、Wexnerスコアを経時的に測定し、直腸切除もしくは人工肛門閉鎖術後1年目のスコアを算出した。LARSスコアは合計点で「LARSなし(0-20)」、「軽症LARS(21-29)」、「重症LARS(30-42)」に分類した。
結果:326例(RS:64例,Ra:110例,Rb:152例)の直腸癌患者で術後1年目のスコアを算出できた。腫瘍の局在が低位、低位吻合、また一時的回腸人工肛門造設群では重症LARSの割合が有意に高く、Wexnerスコアも有意に高値であった(p<0.05)。術式としてはISR、VLARで重症LARSは有意に割合が高く(p<0.005)、ISR、VLAR、LAR、ARの順に重症LARSの割合が低下した。一時的回腸人工肛門を造設した患者は閉鎖までの期間が長期なほどLARSスコア、Wexnerスコアが高い傾向にあった(p=0.22)。Rb直腸癌(152例)において、術前放射線治療群は施行していない群に比べて重症LARSの割合は高い傾向にあったが有意差は認めなかった(p=0.13)。Wexnerスコアは術前放射線治療群で有意に高かった(p<0.005)。術後縫合不全(CD分類3以上)とLARSスコア、Wexnerスコアに関連性は認められなかった。多変量解析において腫瘍の局在が低位、低位吻合は重症LARSの独立した危険因子であった(p<0.05)。
結語: 直腸癌において腫瘍の局在、吻合レベルは術後の排便機能不良を予測する因子として考えられた。