Presentation Information
[R16-1]ウエルッケ脳症治療中に発症したと思われる高度肛門周囲膿瘍をリハビリ中は褥瘡として対処され難治性痔瘻となった症例
柴田 佳久 (総合青山病院)
はじめに:高齢者で脳血管疾患を有しながら各科手術や積極的治療を受ける機会が増えた一方,その後在宅療法を余儀なくされる患者も多い。原疾患治療で長期入院中に発生場所が臀部であるために褥瘡と捉えられ、肛門周囲膿瘍を見逃されて誤った処置がなされてしまう症例が存在する.今回、脳症にて入院治療となり、リハビリ転院中に褥瘡の診断で不十分な処置が長期になされた肛門周囲膿瘍を経験した.
症例:60才代男性.既往歴:心筋梗塞手術後.現病歴:4年前複視出現,歩行困難にて基幹病院入院.ウエルニッケ脳症・四肢筋委縮・左側体幹失調・小脳半球失調の診断治療がなされた.記憶見当識注意認知機能低下と心機能低下から高度リハビリテーションは困難と判断され,リハビリ病院経由で療養病院転院となった.下着汚染がみられ先医から褥瘡として処置されていた.診察・CTにて肛門周囲膿瘍とその臀部への進展と診断し,基幹病院外科・皮膚科へ紹介するも肛門直腸との瘻孔なしと診断され,臀部高度褥瘡として皮膚切開・洗浄処置を指示されていた.膿瘍腔の拡大にて再度基幹病院受診とするも皮膚切開の追加で終わっていた.褥瘡処置・洗浄にて一部創の縮小がみられたが膿瘍腔は深く残存したため,入院施設より当院当科紹介となった.治療経過:診察とCT下瘻孔造影検査を行い,高位広範肛門周囲膿瘍・痔瘻と診断した.脊椎麻酔下根治術を予定するも,高度徐脈,心不全となり循環器内科にて治療される.薬剤治療後,局所麻酔にて肛門周囲膿瘍処置を行った.栄養補給,局所処置,リハビリテーションを行い,時間は要したが瘻孔及び膿瘍腔の治癒を見た。結語:褥瘡としか認識されず,フルニエ症候群までには至らなかった高位肛門周囲膿瘍の1例を報告した.今後脳血管疾患による体動制限,リハビリ入院,高齢に対する在宅療法がますます増加すると予想されるが,肛門周囲膿瘍を褥瘡として漫然と処置される危険があることを認識し,肛門病専門医として医療者への啓発が必要と考える.
症例:60才代男性.既往歴:心筋梗塞手術後.現病歴:4年前複視出現,歩行困難にて基幹病院入院.ウエルニッケ脳症・四肢筋委縮・左側体幹失調・小脳半球失調の診断治療がなされた.記憶見当識注意認知機能低下と心機能低下から高度リハビリテーションは困難と判断され,リハビリ病院経由で療養病院転院となった.下着汚染がみられ先医から褥瘡として処置されていた.診察・CTにて肛門周囲膿瘍とその臀部への進展と診断し,基幹病院外科・皮膚科へ紹介するも肛門直腸との瘻孔なしと診断され,臀部高度褥瘡として皮膚切開・洗浄処置を指示されていた.膿瘍腔の拡大にて再度基幹病院受診とするも皮膚切開の追加で終わっていた.褥瘡処置・洗浄にて一部創の縮小がみられたが膿瘍腔は深く残存したため,入院施設より当院当科紹介となった.治療経過:診察とCT下瘻孔造影検査を行い,高位広範肛門周囲膿瘍・痔瘻と診断した.脊椎麻酔下根治術を予定するも,高度徐脈,心不全となり循環器内科にて治療される.薬剤治療後,局所麻酔にて肛門周囲膿瘍処置を行った.栄養補給,局所処置,リハビリテーションを行い,時間は要したが瘻孔及び膿瘍腔の治癒を見た。結語:褥瘡としか認識されず,フルニエ症候群までには至らなかった高位肛門周囲膿瘍の1例を報告した.今後脳血管疾患による体動制限,リハビリ入院,高齢に対する在宅療法がますます増加すると予想されるが,肛門周囲膿瘍を褥瘡として漫然と処置される危険があることを認識し,肛門病専門医として医療者への啓発が必要と考える.