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[R16-7]都心部肛門科クリニックにおける梅毒診療の現状
福原 政作1,2 (1.名古屋栄駅前ふくはら大腸肛門外科・消化器内科, 2.医療法人愛知会家田病院)
【背景】梅毒は梅毒トレポネーマによる細菌性の性行為感染症である.本邦において近年著しい増加傾向がみられ,同様に肛門梅毒の症例も増加している.【対象】2020年3月から2024年12月までに当院で活動性梅毒と診断した症例41例につき検討した.【結果】対象症例は男性34例女性7例.平均年齢は34歳. 全例なんらかの肛門愁訴を有していた. 診断契機の内訳は肛門部硬性下疳が31例,扁平コンジローマが2例,梅毒性直腸炎が1例,別の意図による採血での診断(潜伏梅毒)が7例. 他STDとの合併はHIVが9例,尖圭コンジローマが6例,クラミジア直腸炎が1例. 感染経路として肛門性交は聴取できたもので26例,風俗含め不特定者との性交9例,不明例6例であった.【考察】当院における症例の76%は肛門部硬性下疳つまり第一期梅毒での診断であった. また男性が83%を占め,うち80%は同性愛者いわゆるMSM(men who have sex with men)であった. 梅毒はこれまで特徴的な皮膚病変を典型症状として診断の主眼とされてきた. しかし感染後経過とともに一旦症状が消退するも,血行性リンパ行性に全身撒布されあらゆる臓器に急性・慢性炎症をきたす. 多数の診療科にわたる多彩な臨床症状を呈し,他疾患と誤診されることも多い. このため感染初期に局所病変が出現したタイミングで患者が受診した際に担当科医が梅毒を正しく鑑別できるかどうかが重要となる. 肛門科でいえば肛門梅毒の特徴的所見である硬性下疳を初診で見落とさないことである. 確診できなくとも鑑別に挙がれば梅毒血清学的診断により早期発見・早期治療が可能となる. 当院は名古屋市栄の歓楽街に位置する肛門科クリニックである. 若年層や様々なLGBTQ患者の受診が多く,多数の肛門梅毒症例を経験した. 適切な早期診断・治療の啓発を目的として自験例につき供覧し文献的考察を含めて報告する.