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[R21-5]腹壁構造に注目した傍ストーマヘルニア発生の術前リスク因子の検討

後藤 充希, 吉敷 智和, 小嶋 幸一郎, 麻生 喜祥, 飯岡 愛子, 若松 喬, 本多 五奉, 代田 利弥, 磯部 聡史, 中山 快貴, 須並 英二 (杏林大学医学部付属病院下部消化管外科)
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【始めに】ストーマの合併症には、頻度が多いものに傍ストーマヘルニア(PSH)がある。PSHのリスク因子として腹壁構造を考慮した研究は少ない。
【目的】PSH発生のリスク因子をストーマ造設前の臨床病理学的因子、CT画像所見から抽出し対策を検討する。
【方法】2018年1月から2021年12月までに人工肛門造設を行う手術を受けた143名を対象とした。PSHの定義は、CT所見で人工肛門につながる腸管以外の脂肪織、腹腔内臓器を腹壁外に認めた症例、また臨床上PSHと診断した症例とした。検討因子は、臨床病理学的因子(年齢、性別、緊急手術、糖尿病、ステロイド、術式、ストマ部位など)と画像解析システム(Synapse Vincent)を用いて術前CT(臍レベル)にて腹囲、内臓脂肪(VFA:visceral fat area)、皮下脂肪(SFA:subcutaneous fat area)、腹部周囲筋(腹直筋や腹横筋)、大腰筋、脊柱起立筋の面積を計測し因子とした。なお当院はストーマ造設前に全例ストーマサイトマーキングを行い、経腹直筋経路で作成している。
【結果】PSHは19%(27/143)に認めた。観察期間は14.5ヶ月(中央値 1.5-61.5)であった。年齢は66歳(中央値25-92)、男性86名、女性57名であった。単変量解析では、BMI(p=0.001)、内蔵脂肪面積(p=0.019)、皮下脂肪面積(p=0.001)、腹囲(p=0.031)、腹部周囲筋面積(p=0.001)で有意差を認めた。多変量解析(単変量解析でp<0.05であった因子)では、皮下脂肪面積(p=0.002 OR 1.011 [1.004-1.018])、腹部周囲筋面積(p=0.006 OR 1.048 [1.013-1.084])で有意差を認めた。
【考察】PHS発生リスク因子は、肥満や腹腔内圧上昇が報告されている。本研究では皮下脂肪が多く、腹部周囲筋発達していることがリスク因子であった。皮下脂肪が厚いことで、挙上腸管の筋膜固定が不十分になった可能性がある。また、腹腔内圧が上昇しやすい状況が結果として、腹部周囲筋の発達という腹壁構造の特徴を示した可能性がある。PSH予防として、皮下脂肪が多い症例では術前より減量指導や、手術ではより確実な腹直筋筋膜と挙上腸管との固定が重要である。また腹部周囲筋発達症例では、術後に腹腔内圧が上昇するような生活を避ける指導が必要であると考えられた。