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[R24-6]横行結腸左側~左結腸癌に対する血管構造から考える低侵襲手術:ロボット支援下手術と腹腔鏡手術の比較

茂田 浩平, 門野 政義, 森田 覚, 岡林 剛史, 北川 雄光 (慶應義塾大学医学部外科学(一般・消化器))
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【背景】脾彎曲周囲の結腸癌の外科的切除は、血管走行の多様性から技術的に高難度とされる。我々は、腹腔鏡手術(Lap)において頭側アプローチを先行する術式を標準化しており、ロボット支援下手術(Rt)にも応用している。本研究では、Rtにおける頭側アプローチのビデオを供覧し、脾彎曲授動を伴う左側結腸癌に対するLapとの短期成績の比較検討を行った。
【方法】2015〜2025年に当院で施行された脾彎曲授動を要する横行結腸左側〜下行結腸癌72例を対象とし、短期成績を比較した。
【手術手技】術前の3D-CT血管構築画像より下腸間膜静脈(IMV)の流入先[上腸間膜静脈(SMV)本幹または脾静脈(SpV)]および中結腸動脈(MCA)、副MCA(aMCA)の走行を必ず確認する。Lap・Rt問わず頭側アプローチを先行し、網嚢開放と膵脱転により横行結腸間膜付着部を郭清上縁として設定する。IMV流入部周囲の郭清範囲は、内側アプローチでは郭清上縁の設定が難しく、頭側アプローチではこの点で優位性があると考えている。脾彎曲部授動後、内側アプローチで左結腸動脈(LCA)周囲郭清とIMV沿いの剥離を行い、両アプローチの剥離層を連結する。最後に残ったMCA・aMCAを切離し、郭清を完了する。
【RtとLapの比較】MCA領域の郭清において、Lapでは超音波凝固切開装置が必須となる。一方で、Rtではモノポーラシザースによる繊細な操作が可能であり、エネルギーデバイスを必ずしも必要としないため、コスト抑制の一助となる可能性がある。また、膵背側のSpV・IMV周囲では、ロボット助手アームの固定により視野の安定性が確保され、Lapに比して精緻な操作が可能である。
【結果】
Lap群54例とRt群18例を比較すると、手術時間に有意差はなく(Lap群:中央値294分、Rt群:293分、p=0.649)、出血量はRt群で有意に少なかった(Lap群10ml、Rt群5ml、p<0.001)。術後合併症(Clavien-Dindo分類IIIb以上)はLap群で5例、Rt群では0例であった。
【結語】
頭側アプローチを先行する血管構造に基づいたRtは、脾彎曲授動を伴う左側結腸癌において、Lapと同等の安全性を維持しつつ、より精緻な操作が可能であり、術後成績の向上に寄与する可能性が示唆された。