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[R25-6]リモート手術に向けたロボット支援下直腸切除術における新規detachable-PSI鉗子を用いた完全体腔内吻合の短期成績:Propensity score-matched analysis

平木 将之, 在田 麻美, 柳澤 公紀, 安井 昌義, 武田 裕, 村田 幸平 (関西労災病院消化器外科)
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背景: ロボット手術では多関節機能と視野の安定化により、精緻な操作が可能となった。右側結腸切除での体腔内吻合は徐々に広がっているが、直腸癌手術での完全体腔内吻合の報告は殆どない。体外でのAnvil固定以降、通常腹腔鏡下操作となるが、長時間手術ほど気腹漏れ、手振れが影響し、深い骨盤底での操作が困難となる。またリモート手術では現地助手の負担軽減は必要不可欠な課題である。
対象と方法: 2022年9月〜2025年3月でDST/SST吻合を伴うロボット支援下手術(S〜Rb)143例において、体内Anvil固定の完全体腔内吻合50例、体外固定による通常吻合93例を対象とし、完全体腔内吻合の短期成績を後方視的に検討した。さらに1:1 Propensity score-matched analysisを行い、患者背景バイアスを調整した。
体内固定は、TSME/TME後に口側腸間膜を体内で処理し、ICGで腸管血流を確認した。標本切離後に、Purse-String sutureまたはDetachable-PSI鉗子を用いて口側腸管へAnvil固定をした。連続して吻合まで行い、最後に標本を小切開創から取り出した。
結果:マッチング後各コホート44例ずつを比較した。体内固定群は体外群と比べ、臍創長が短く(28 vs. 31mm, p=0.025)、出血量が少なく(7.9 vs. 24ml, p=0.025)、手術時間の短縮を認めた (331 vs. 385mins, p=0.037)。特にSLARでその差が著明であった (440 vs. 559mins, p=0.034)。全例助手一人で吻合を行った。リークテスト陽性率、術後排ガス日、食事開始日、VAS score、在院日数、Clavien–Dindo grade I以上の合併症は同等であった。体内固定群にCD grade III以上や吻合に関わる合併症はなかった。
結語: detachable-PSI鉗子を用いた完全体腔内吻合は安全に行えた。吻合までのスムーズなロボット手術が可能となり、助手のマンパワーが軽減し、手術時間短縮と出血量減少のメリットを認めた。今後更なる症例数の集積による検証が必要である。