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[R28-6]Minimum Umbilicus–Vertebra Diameter(MUVD)は大腸癌低侵襲手術における術後腹腔内感染症の簡便で精度の高い指標となりうる
関 由季1, 渋谷 雅常1, 丹田 秀樹1, 西山 毅1, 月田 智也1, 田中 章博1, 小澤 慎太郎1, 大森 威来1, 石舘 武三1, 米光 健1, 福井 康裕1, 笠島 裕明1, 福岡 達成2, 久保 尚士2, 前田 清1 (1.大阪公立大学消化器外科, 2.大阪市立総合医療センター消化器外科)
【背景】肥満が腹腔内手術のSurgical Site Infection(SSI)のリスク因子であることは報告されてきたが,近年コンピュータ断層撮影(CT)画像を用いて得た肥満関連の身体パラメータがSSIを予測する簡便な指標であると報告されている.久保らは臍から椎体までの最小距離(Minimum Umbilicus–Vertebra Diameter:MUVD)は胃癌低侵襲手術後のSSIを予測する有用な指標であると報告したが,大腸癌におけるMUVDの有用性についてはまだ報告がない.そこで今回大腸癌低侵襲手術後のSSIを予測するCT画像を用いた指標について検討した.【方法】対象は2017年1月から2019年12月に当院でpStage0-IVの大腸癌に対して腹腔鏡補助下手術を施行した297例.吻合をしなかった症例,開腹移行した症例,複数箇所の切除をした症例は除外した.手術前に撮影されたCTで画像解析システムSYNAPSE VINCENT® (富士フィルム株式会社)を使用し,臍レベルの冠状断面像でMUVDおよび皮下脂肪,腹腔内脂肪面積を算出した.MUVDは臍の最深点から椎骨までの最短距離と定義した.また同システムで腹腔内脂肪の全体積を算出した.カルテよりBody Mass Index(BMI)を計算し周術期の情報を調査した.術後の感染性合併症の有無で症例を2群に分け各因子との関連を検討した.【結果】297例のうちSSIを認めた症例は55例.表層SSIが22例,深層SSIが0例,臓器・体腔SSIが34例でそのうち縫合不全が20例であった.MUVDは中央値73.7(24.9-157.3)mmであった.臓器・体腔SSI群のMUVD(中央値87.0mm)は臓器・体腔SSIなし群(中央値72.5mm)と比較し有意に長かった(p=0.013).縫合不全あり群でもMUVD(中央値83.8mm)は縫合不全なし群(中央値73.0mm)と比較し有意に長かった(p=0.040).皮下脂肪面積,腹腔内脂肪面積や腹腔内脂肪体積,BMIでは両群間で有意な差は認めなかった.またMUVDと皮下脂肪面積,腹腔内脂肪面積,腹腔内脂肪体積,BMIはそれぞれ有意な相関関係を認めた(p<0.001; p<0.001; p<0.001; p<0.001).【結語】MUVDは比較的簡便に測定可能な指標である.大腸癌低侵襲手術後の感染性合併症を予測する上でMUVDは深部・体腔SSIや縫合不全を予測する精度が高い指標である可能性が示唆された.