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[R29-2]痔瘻、肛囲膿瘍からみたクローン病(CD)とCDからみた肛門病変
野明 俊裕, 石井 正之, 石橋 英樹, 鈴木 麻未, 榊原 優香, 白水 良征, 長田 和義, 荒木 靖三 (社会医療法人社団高野会くるめ病院)
【背景】CDには肛門病変が高率に合併しQOLに大きな影響を及ぼすと言われている。しかしその治療方針は肛門科診療を主に行っている施設とIBDを主に行っている施設では異なった方針がとられていることが多い。【目的】CDの肛門病変に対する適切な治療を図るため当院における痔瘻、肛囲膿瘍手術から見たCDの診断者数と、CD新規登録者からみた肛門病変の頻度を電子カルテから抽出しその治療経過を検討する。【対象と方法】対象は2016年1月から2024年12月までに当院で行われた腰椎麻酔下の痔瘻肛門周囲膿瘍に対する手術1209例、また2019年1月から2024年12月までに当院で新規CD難病申請を行った54例を対象とした。肛門病変を有する症例を抽出し、バイオ製剤導入時期とその割合、治療経過を追跡し最終受診時におけるCDAI (Crohn’s Disease Activity index)、PCDAI(Perineal Crohn’s Disease Activity index)を調査し治療成績を検討した。【結果】痔瘻、肛門周囲膿瘍手術症例1209例のうちCDと診断された症例は38例3.1%であった。一方CD新規登録者54例のうち肛門病変を有する症例は43例78.1%で、ドレナージを行った症例は26例48.1%、他は浮腫状の皮垂や直腸肛門潰瘍、肛門狭窄などであった。初診時のCDAIは平均で123(12-402)、PCDAIは4.0(0-20)。肛門病変の有無でCDAIを比較すると肛門病変あり116、肛門病変なし151で有意差はないものの肛門病病変を有する症例のCDAIが低値であった。バイオ製剤は48例で導入され、導入されなかった6症例は連絡なく受診しなくなった症例が2例、他院へ転院となった症例が2例、現在も当院で経過観察中は2例であった。初診時肛門病変を有していた43例中12例でPCDAIが0となり、21例で2未満を達成していた。ドレナージを行った症例で手術からバイオ導入までの期間は、バイオ導入後にドレナージした症例が1例、バイオ導入なしが1例、他は4日から1269日で一定の傾向は見いだせなかった。