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[R29-4]クローン病肛門病変に対する経口ステロイドでの寛解導入と免疫調節薬での維持の成績

中島 光一, 福島 恒男, 西野 晴夫, 野澤 博, 小林 清典, 岩佐 亮太, 針金 幸平, 中村 裕佳, 林 佑穗, 鈴木 康元, 杉田 昭, 宮島 伸宜, 松島 誠 (松島病院胃腸科)
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【背景】クローン病(CD)の肛門病変に対しては、外科肛門科と連携して必要に応じ切開排膿やシートンドレナージを行うことを前提として、腸管病変と同様に内科的治療が必要である。腸管病変の治療として経口ステロイド(PSL)で寛解導入し免疫調節薬(IM)で寛解維持を試みることは多いが、肛門病変に対するその成績の報告は、有効とされる生物製剤(Bio)に比べて少ない。【目的・方法】当院で2018年以降に、有症状の肛門病変をもつCDでPSLを寛解導入目的で30mg/日以上使用し、終了前にIMを維持目的で追加して、その後のBioの追加の有無にかかわらず1年以上経過を観察できた30例を対象に、その成績について検討した。対象例の平均年齢は29歳、男女比5:1、病型は小腸大腸型24例、大腸型4例、特殊型2例、導入前CRPの中央値は1.6㎎/dl、ALBの中央値は3.8g/dlであった。肛門病変の内訳は、痔瘻・肛門周囲膿瘍25例、肛門潰瘍・裂肛22例、浮腫状皮垂10例、痔瘻根治術後難治創4例で、PSL導入前に22例で切開排膿が行われていた。PSL使用期間の平均値は11(7~13)週、使用したIMはAZA27例、6MP3例、導入中の併用薬はエレンタール 16例、5-ASA 14例、抗生剤6例、導入後の平均観察期間は36(13~84)ヵ月であった。
【結果】肛門病変の症状をPDAIの排膿と疼痛のサブスコアで評価すると、排膿サブスコアの平均値は、PSL導入前2.1から初回評価時(導入後平均3週)に1.3、PSL終了時(導入後平均14週)に1.1まで低下し、疼痛サブスコアも1.6からそれぞれ0.7、0.4まで低下した。肛門病変の臨床的寛解を排膿・疼痛サブスコアともに0と定義すると、寛解はPSL終了時6例(20%)、1年後11例(37%)、最終受診時17例(57%)に得られた。観察期間中Bioを追加したのは12例で、累積Bio使用率は1年30%、3年45%であった。寛解17例でBioの使用をみると、Bio未使用が12例で、一方Bioを追加していた5例中3例は追加前に肛門は寛解しており、計15例(50%)はBio未使用で寛解が得られていた。【結論】肛門病変を有するCDにおいて、PSLでの導入とIMの維持で肛門の寛解が得られることは多く、初期にBioを使用しないaccelerated step-upの治療も選択し得ると考えられた。