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[R3-3]肛門手術後排尿障害における回復遅延因子の検討

宮原 悠三1, 有田 宗史1, 下地 信1, 山田 恭子2, 東 博1 (1.宇都宮肛門・胃腸クリニック, 2.山田医院)
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【背景】肛門手術後排尿障害(POUR)は周術期転帰を左右する重要な合併症であるが,排尿機能が持続的に回復するまでの時間を指標とした解析は限られている。本研究では「初回導尿から,再導尿を要さなくなった最初の自排尿時刻」をアウトカムとし,疼痛の代理変数である追加鎮痛薬回数との関連を検証した。
【方法】2024年1月~2025年3月に当院で肛門手術後POURと診断された60例を後方視的に解析した。追跡開始を初回導尿時とし,回復が得られない場合でも1週間(168 h)で観察を打ち切った。Kaplan–Meier法で年齢四分位・性別・手術時間(>30 min)・男性BPH・弱オピオイド使用・追加鎮痛薬四分位の群間差を描出し,ログランク検定を実施した。多変量Cox比例ハザードモデルには追加鎮痛薬(連続),年齢,手術時間,性別,BPH,弱オピオイド使用を共変量として投入した。
【結果】排尿機能回復までの中央値は3.5 h〔IQR 1.8–11.5〕であった。追加鎮痛薬四分位では回数が増えるほど回復が遅延し,ログランク検定はχ²=9.54(df=3),p=0.023と有意であった。Cox解析でも追加鎮痛薬回数は独立因子として残り,1回増加ごとに回復速度が22 %低下した(HR 0.78,95 %CI 0.62–0.97,p = 0.024)。年齢,性別,手術時間,BPH,弱オピオイド使用はいずれも有意でなかった。
【結論】定期鎮痛薬内服のみでは疼痛緩和が不十分であることを示唆する追加鎮痛薬回数の増加は,排尿機能回復を遅延させる独立因子として確認された。より大規模な前向き研究で本知見を再検証し,術後疼痛管理の最適化に資するエビデンスを強化する必要がある。