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[R5-2]当院での閉塞性結腸癌に対するSEMS留置の短期的および長期的成績

多加喜 航, 松本 辰也, 藤木 博, 小泉 範明 (明石市立市民病院外科)
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【背景】閉塞性大腸癌に対するbridge to surgery(BTS)を行う上で自己拡張型金属ステント(self-expanding metallic stent; SEMS)留置は有効な方法ではあるが,長期予後に与える影響に関しては依然議論の余地がある.本研究では閉塞性結腸癌に対するSEMS留置による短期的な安全性の検討と長期予後に与える影響に関して検討・解析した.
【方法】2016年から2022年に明石市立市民病院で根治切除術を行ったpStage IIおよび III結腸癌症例251例を対象に後方視的に解析した.SEMS留置症例(SEMS(+))と留置していない症例(SEMS(-))に対するその臨床病理学的因子や術後短期成績に関して検討した.また,それぞれpStage IIおよびStage III症例での長期予後に関して検討・解析した.
【結果】閉塞性結腸癌症例が68症例あり,BTSのためにSEMS留置された症例が63症例あった.手術短期成績に関してSEMS(+)63症例とSEMS(-)188症例の比較検討ではSEMS(+)群で手術時間(207min vs 183min, p<0.01)が有意に長く,出血量(148g vs 107g, p<0.01)も有意に多かったが手術アプローチ法,術後合併症率や術後在院日数に差はなく、手術は侵襲的とはなるが安全に施行できている結果となった.pStage II症例(n=130)の予後解析ではSEMS(+)群(n=25)で有意にRFSが不良(69.4% vs 86.4%, p=0.02)であったが,OSに有意差はなく,多変量解析でもSEMS(+)は独立した予後不良因子とはならなかった.臨床病理学的因子との多変量解析ではSEMS(+)群では有意に浸潤型の肉眼型(p<0.01)であり,リンパ管浸潤陽性であった(p=0.02).pStage III症例(n=121)ではSEMS(+)群(n=38)でRFS(60.8% vs 75.8%, p=0.07)およびOS(62.7% vs 77.1%, p=0.15)がともに不良傾向であったが有意差はなかった.
【結語】閉塞性結腸癌に対してSEMS留置後症例ではやや侵襲的な手術にはなるが,短期成績は良好であり,BTSとしては安全で有効な手段である.しかし,長期予後はSEMS留置により不良となる傾向があり,術前のSEMS留置適応に関しては慎重な判断が必要となる.