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[R5-4]閉塞性大腸癌に対する術前ステント留置(Bridge to Surgery:BTS)症例の術後合併症発生リスク因子の検討

矢那瀬 拓哉1, 吉敷 智和1, 麻生 喜祥1, 飯岡 愛子1, 若松 喬1, 本多 五奉1, 片岡 功2, 礒部 聡史1, 代田 利弥1, 中山 快貴1, 後藤 充希1, 須並 英二1 (1.杏林大学医学部付属病院下部消化管外科, 2.杏林大学医学部付属杉並病院消化器・一般外科)
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【背景】閉塞性大腸癌における術前大腸ステント留置術は, Bridge to Surgery(BTS)として普及しており, 緊急での人工肛門造設を回避可能な治療選択肢として注目されている. 一方で, 縫合不全などの術後合併症のリスク因子となる可能性も指摘されている. 【目的】BTS症例における術後合併症発生のリスク因子を抽出し, 対策を検討する.【対象】2018年11月から2025年3月までに, 当院で閉塞性大腸癌に対してBTS目的に大腸ステントを留置した71例を対象とした.【方法】評価項目として, 患者因子(性別, 年齢), 臨床病理学的因子(腫瘍部位, 腫瘍径, 病期), 術前生化学データ(TP, Alb, CRP, 総リンパ球数), 栄養スコア(PNI), 予後スコア(mGPS)を用いて, Clavien-Dindo分類Grade II以上の術後合併症のリスク因子を後ろ向きに検討した.【結果】対象は71例, 年齢71歳(中央値:30〜92), 男性35例(49%)であった. 腫瘍部位は右側結腸11例, 左側結腸35例, 直腸25例であった. ステント留置期間は26日(中央値:5〜173日), 術後入院期間は14日(中央値:8〜68日)であった.ステント留置に関連する合併症は11例(15%)に発生し, 一部に経口摂取制限を要した症例もみられた. 術後合併症(CD分類Grade II以上)は13例(18%)であり, 内訳は縫合不全3例, 腸閉塞2例, 腹腔内膿瘍2例, 術後出血1例, 尿路感染症3例, 腸炎2例であった. 人工肛門を造設していない61症例において, ステント留置前後のデータを用いてリスク因子を検討した結果, 多変量解析にてステント留置関連合併症の有無およびmGPS(1点以上)が術後合併症の有意なリスク因子であった(P<0.001). さらに, ステント留置翌日の炎症反応の上昇が, 術後合併症発生と有意に関連していた(P<0.001).【結論】ステント留置による合併症および術前mGPSの改善不良は, 術後合併症のリスク因子であった. BTSにより経口摂取が可能となり, 栄養状態や閉塞性腸炎の改善が期待されるが, 一方でその効果が限定的な症例も存在した. ステント留置に関連した合併症のある症例や, mGPSが改善しない症例では, 術式選択や手術時期の選択に慎重な検討が必要であると考えられた.