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[R8-2]当院における高齢者pStageII, III大腸癌に対する治療成績の検討

白石 謙介, 古屋 信二, 樋口 雄大, 松岡 宏一, 高橋 和徳, 出雲 渉, 齊藤 亮, 丸山 傑, 庄田 勝俊, 河口 賀彦, 雨宮 秀武, 川井田 博允, 市川 大輔 (山梨大学医学部外科学講座第1教室)
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【はじめに】大腸癌に対する手術は広く普及しているが、高齢者(75歳以上)における手術適応や治療評価基準については、いまだ十分な検討がなされていない。全身状態を考慮した慎重な適応判断が求められる。さらに、短期的な手術成績(術後合併症や入院期間など)に加えて、栄養状態も重要な因子である。
本研究では、当院で手術を施行した大腸癌のpStage II・III症例を対象に、75歳以上の高齢者群(H群)と75歳未満の非高齢者群(L群)に分け、治療成績および予後因子の検討を行った。
【方法】当院で2007年から2018年までに大腸癌に対して根治切除を施行したpStageII・III症例281例を対象とした。
【結果】H:L/88:193例、年齢中央値80(75-97):63(24-74)歳、性別(男/女)は44/44:117/76。BMIは21.8:22.7とH群で低く(p=0.05)、血清Alb値(g/dl)は3.8:4.1とH群で低く(p <0.001)、サルコペニア(なし/あり)は40/48:126/67、PNIは 44.95:47.25とH群で低栄養、筋力低下を認めた。術前にASA-PS3以上の合併症を認める割合(なし/あり)が67/21:177/16とH群で優位に高かった。原発巣(結腸/直腸)は61/27:102/91で、有意差(p=0.05)あり。pStage(H:L)II/IIIは(45/43:95/98)、pT4は(60/28:152/41)、手術時間、出血量に差は認めず、Clavien-Dindo Grade II以上の術後合併症、縫合不全、在院日(13:12日)にも差を認めなかった。5年全生存率(H/L)は68.1/82.6%、pStageII:79.9/88.8%、III:76.6/55.0と有意差を認めた。多変量解析では、75歳以上、mGPS、Stage(II or III)、 pT4症例、静脈侵襲陽性が独立した予後規定因子であった。
【考察】高齢者大腸癌においても、短期的な手術成績に大きな差はみられなかったが、長期予後は非高齢者と比較して有意に不良であった。75歳以上、Stage III、pT4、mGPS高値、静脈侵襲陽性は独立した予後不良因子であり、高齢者の治療方針決定において、全身状態と栄養・炎症指標を踏まえた包括的評価が重要である。