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[R9-5]大腸癌細胞におけるAngiopoietin-like protein 2発現と他疾患死の関連

堀野 大智1,2, 堀口 晴紀2, 門松 毅2, 秋山 貴彦1, 有馬 浩太1, 小川 克大1, 日吉 幸晴1, 宮本 裕士1, 岩槻 政晃1, 尾池 雄一2 (1.熊本大学大学院消化器外科学, 2.熊本大学大学院分子遺伝学)
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【背景】
 癌患者における宿主消耗(低栄養、全身性炎症、体組成変化)は、不良な予後と関連する。アンジオポエチン様因子2 (Angiopoietin-like protein 2: ANGPTL2)は組織修復やリモデリングに関わる慢性炎症のメディエーターで、複数の種類の癌の促進因子であることが報告されている。
【対象と方法】
 2017年1月〜12月に当院で原発巣切除を施行した大腸癌全Stageの88 症例を後方視的に解析した。免疫組織化学染色により切除標本の腫瘍細胞におけるANGPTL2発現のスコアリングを行い、ANGPTL2-High / Lowの二群に分類した上で、宿主消耗バイオマーカーや臨床病理学的因子、生存との関連を解析した。
【結果】
 患者背景は年齢:70 歳 (63-78) 、男性/女性 : 50/38例、BMI :22.5 kg/m2 (19.9-24.8)、ASA-PS 1,2/3,4:71/17 例であった。ANGPTL2-High/Low:46 / 42 例で、ANGPTL2-Highは左側原発 (P = 0.0410)、壁深達度の進行 (P = 0.0097)、病理病期の進行 (P = 0.0394)と有意に関連していた。ANGPTL2スコアは、全身性炎症を反映するNeutrophil-to-lymphocyte ratio (NLR) (ρ= 0.4170, P < 0.0001)、および宿主消耗を反映するAdvanced lung cancer inflammation index (ALI) (BMI × アルブミン値/NLR) (ρ= -0.3119, P = 0.0031)と有意な相関がみられた。生存との関連に関し、ANGPTL2-High症例では、ALI低値やNLR高値に起因する他疾患死が有意に多かった(ALI: P = 0.0261およびNLR: P = 0.0422)。一方で、ANGPTL2-Low症例では差がみられなかった。
【結語】
 大腸癌細胞ANGPTL2-High症例では、宿主消耗および全身性炎症に起因する他疾患死が多くみられる。