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[SV-2]My Anal Surgery: Transition from Inpatient to Day Surgery

Junichi Iwadare (Iwadare Junichi Clinic)
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先達と呼ぶにふさわしく、長らく肛門科そして我々肛門科医を各学会・研究会のみならず様々な場で強く導いていただき、今なお我々以上の現役でもある肛門科医お二人です。黒川先生には古典的治療法として痔瘻“真のシートン法”と痔核“分離結札法”の奥義を、岩垂先生には名著『肛門基本術式の実際』を更にボリュームアップ、常にBETTER&BESTを目指す新なる術式手技の変遷・工夫をご講演いただきます。とくに肛門科を目指す若い先生方や他科の先生方にも今後の目指すべき指標ともなりましょう。記念の第80回、敬意をはらってお二人の最初で最後の肛門科愛の競演?をご拝聴していただけましたら幸いです。
28年間にわたり入院にての肛門手術を行ってきたが、2006年に自身の診療所を開設して以降は日帰りにての肛門手術を行うようになり19年間が経過した。 目的とした日帰り手術は症例の重症度に関わらず、入院手術と同等に一度の侵襲で根治させ、かつ術後の通院回数を少なくして早期の社会生活への復帰を可能にするものである。 そのために以下のような工夫を重ねてきた。
● 手術・術後日程の最適化: 週末を利用して術直後の安静期間を確保し、週明けの月曜日には職場復帰が可能となるスケジュールを組むことで、社会生活への早期復帰を促す。
● 麻酔方法の工夫: 麻酔専門医の管理下で静脈麻酔と局所麻酔を併用し、手術中のみならず帰宅後の鎮痛効果も高める。
● 創管理の工夫: アルギン酸塩被覆材や適切な軟膏の使用により、創部を湿潤環境に保ち、乾燥による痛みを軽減させ治癒を促進する。
● 手術術式の工夫:
○ 根治性を最優先しつつ、各疾患に対し最適な術式を選択する。
○ 痔瘻では創閉鎖を原則とし、開放創とする場合も創縮小によって治癒を早める。
○ 痔核では結紮切除術半閉鎖術式を、裂肛では侵襲の少ないLSISを第一選択とする。

肛門は微妙な感覚を司る場所であるため、肛門手術は単に病変を切除するだけでなく、術後の機能温存や整容面への配慮が不可欠となる。手術創は排便時に汚染されやすく、安静や清潔を保つのが困難で患者への負担も大きい。術後経過が不順な場合は再発はもとより難治創、肛門狭窄などを引き起こし術前より状態を悪化させるリスクも伴う。そして術後の状態は痛みや出血、腫脹として患者自身が日々実感するため、技量が直接反映される厳しい手術といえる。 一方で、この難しさこそが肛門手術の大きな魅力と、やりがいを生み出している。問題が生じた原因を追求し、工夫と試行錯誤を重ねることで、手術は確かな結果として実を結ぶ。そのため、肛門手術は「これで完全」という終着点がなく、常に改良が求められる、やりがいのある分野と言える。