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[SY1-5]Introduction to Total Neoadjuvant Therapy for Locally Advanced Rectal Cancer Based on Neoadjuvant Chemotherapy

Atsushi Ogura, 村田 悠記, 奥田 賢司, 前田 真吾, 尾入 保彰, 岸田 貴喜, 梅田 晋一, 服部 憲史, 水野 隆史, 中山 吾郎, 神田 光朗, 江畑 智希 (Division of Gatroenterological Surgery and Surgical OncologySurgery, Nagoya University Hospital)
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はじめに
直腸癌治療は手術単独を長年基本としてきた日本においても再発リスクに合わせて術前治療を選択する時代に突入した。しかし、欧米とは文化も異なり、最適な治療戦略を模索しているといえる。放射線は局所制御効果が優れているものの、組織の繊維化による手術の質の低下や晩期障害など様々な負の遺産も多く、標準的な手術で根治可能な直腸癌に対する必要性は熟慮すべきである。当科では2008年より進行直腸癌に対する術前化学療法を行なってきた。2020年以降はnonoperative management (NOM)目的またはcircumferential resection margin確保のために限定してtotal neoadjuvant therapy (TNT)を行なっている。
対象と方法
2008年8月から2024年10月までに当院で術前化学療法開始し、根治手術またはNOMを行った腫瘍下縁が肛門縁から10cm以内の進行直腸癌例135例を対象とした。TNT導入前群(n=100、観察期間中央値98ヶ月)とTNT導入後群(n=35、観察期間中央値20ヶ月)で、短期・中期成績を比較検討した。
結果
TNT導入後群において19例(54%)でTNTが施行された(induction 11例、consolidation 8例)。TNT導入前群では、tripletレジメンは施行されていなかったが、TNT導入後群では21例(60%)で施行された。術前治療完遂率は両群で差は認めなかった(86% vs. 83%, p=0.652)。
完全消失(CR)率はTNT導入前群でpCR 9例(9.0%)であったのに対し、TNT導入後群は11例(pCR4例+ycCR例7例, 31%)であった(p<0.01)。術後重症合併症(Clavien-Dindo 3以上)は、TNT導入前群で22例(22%)に対してTNT導入後群で6例(21%)と両群で有意差を認めなかった(p=0.54)。2年局所再発率はTNT導入前群で4.0%であったのに対し、TNT導入後群は0%であった(p=0.27)。2年のRFS(79% vs. 78%, p= 0.64), OS (96% vs. 96%, p=0.46)に関しても有意差は認めなかった。TNT導入後群で7例(20%)がNOMを選択し、全例TME-freeで経過観察中である。
結論
TNT導入後群の観察期間は短いが、当院の放射線治療の選択的利用をコンセプトとしたTNTの導入は短期成績を担保可能かつ、NOMの可能性も損なわない新たな治療戦略となり得る。