Presentation Information
[SY3-2]Matsushima Hospital: Yesterday’s Wisdom, Tomorrow’s Vision
Sayuri Matsushima, 佐井 佳世, 米本 昇平, 酒井 悠, 鈴木 佳透, 紅谷 鮎美, 松村 奈緒美, 下島 裕寛, 岡本 康介, 國場 幸均, 黒水 丈次, 大島 隆一, 小菅 経子, 宮島 伸宜, 松島 誠 (Matsushima Hospital)
【昨日:秘伝の時代】当院の歴史は1924年に初代松島善三が松島医院を開設したことに始まる.2代目松島善視の著書「松島病院80周年史 鬼手仏心を銘として」の「経験主義の弊害」の項には「痔の治療はまさに「秘伝」で,おのおのの医者が独自に工夫しておこなっていた」と記載されている.この本は2006年に発行されたものだが現在でも肛門病診療はこの「秘伝」の傾向があり,各施設でその技術や経験がartになっているのが肛門病診療の昨日である.【今日:言語化の時代】2025年4月,当院での手術をartではなく言語化しましょうという宮島伸宜先生の呼びかけと3代目松島誠の賛同,当院に勤めておられる先生方のご協力があって「松島流 肛門疾患手術:なぜそうするのか?」が発行された.本著は手術手技を秘伝ではなく「言語化」し,過去のデータから最適と思われる術式を選択し「標準化」することで肛門外科の発展に繋げたいとの思いから作成した.一方で,当院からの論文報告は後方視的な報告ばかりであるのが現状である.その原因の一つとして症例数は非常に多いが毎度報告をする際にデータを集める労力が大きいという課題がある.【明日:データに基づいた最適治療の時代】そこで今年,紅谷鮎美先生と宮島伸宜先生のご尽力によりデータベースが当院でも立ち上がった.今後はこのデータベースを生かして後方視的な報告と同時に前向きの臨床試験などを積極的に行い,この症例数の多さを生かした報告を重ねていきたいと考える.また,近年肛門科を標榜していている医療機関であっても痔核の手術で肛門括約筋を大きく損傷し,適切な治療とは言えない手術をされて当院へ駆け込んでくる患者が目立つようになった.近年の働き方改革や若い先生方の開業思考から,さらに肛門科を標榜する開業医は増えることが想定される.今後は同じ看板を掲げていても,どの医療機関に行けば適切な肛門病診療が受けられるのか患者が分かる仕組みづくりも求められるのかもしれない.