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[WS4-1]Adolescent Cases of Anal Fistula Treated Surgically at Our Institution

Tomojiro Ono, 内海 昌子, 渡部 晃大, 三宅 祐一朗, 久能 英法, 竹中 雄也, 相馬 大人, 安田 潤, 齊藤 徹, 根津 理一郎, 弓場 健義 (Department of Surgery, Osaka Central Hospital)
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10代の痔瘻症例に対する根治術では,20歳以上の症例と同様に術後の肛門機能と根治性を確保することが重要である.一方で炎症性腸疾患(IBD),特にクローン病の関与を念頭に置いた特別な配慮も必要である.当科において痔瘻根治術を施行した10代症例について,クローン病の関与を中心に検討を行った。
2021年1月から2024年12月までに当科で痔瘻根治術を施行した1144例のうち、10代の症例は32例であった.隅越分類ではⅡ型が19例,Ⅲ型が6例であり,クローン病に合併した痔瘻(以下,クローン痔瘻症例)は7例で,全体の21.8%を占めた.これに対し,20歳以上の症例におけるクローン痔瘻症例は25例(2.2%)と有意に低率であった.
クローン痔瘻症例7例のうち,1例は痔瘻発症前にすでにクローン病と診断され,生物学的製剤としてInfliximabによる治療を受けていた.残る6例は術前または術中の所見からIBDを疑い,内視鏡精査を実施した結果,新たにクローン病と診断された症例であった.内視鏡検査を施行した12例中,3例は異常所見を認めず,別の3例では回腸末端部や大腸にアフタ様病変やびらんを認めたが,生検結果は非特異的炎症であった.残る6例では小腸あるいは大腸に炎症所見を認め,病理組織にて肉芽腫を確認してクローン病と新規に診断された.
これら6例に対しては,病名告知および長期的な内科的治療の必要性について十分なインフォームドコンセントを行ったうえで,消化器内科に紹介した.治療としては,2例で5-ASA製剤が,4例で生物学的製剤が導入され,Adalimumabが1例,Ustekinumabが3例に投与され,現在も継続治療中である.
以上より,10代の痔瘻症例ではクローン病の合併率が高く,痔瘻手術を契機に新たにクローン病と診断される症例も少なくない.クローン病は生涯にわたる治療が必要な疾患であるため,病名告知に際しては患者本人および家族への心理的配慮が不可欠であり,消化器内科との連携を密にすることも重要である.