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[WS5-5]Geographic Disparities in Appendectomy Practices in Japan: Insights from a Nationwide NDB Open Data Analysis

Shingo Ito, 藤井 正一 (Shonan Kamakura General Hospital, Department of Surgery)
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背景:2009~2011年のDPCデータによる急性腹症の疫学研究では、急性虫垂炎の頻度は非常に高い。腹腔鏡手術は虫垂切除にも普及しているが地域差の実態は不明である。
目的・方法:本研究は国内の虫垂切除術の実態を把握することを目的に、レセプト情報・特定健診等情報データベース(National Database, 以下NDB)を活用し、2014年度から2022年度までに施行された虫垂切除術を後方視的に解析した。
結果:調査期間中に施行された虫垂切除術は494,911例であり、2019年度をピークとして緩やかな減少傾向を示した。腹腔鏡手術率は2014年度の58.5%から年々上昇し、2022年度には91.5%に達した。膿瘍形成を伴う症例の割合は32.3%であったが、こちらも緩やかに減少傾向を認めた。2022年度の都道府県別手術件数では、東京都(6,171件)、大阪府(4,000件)、神奈川県(3,863件)の順に多く、腹腔鏡率は94.1%、95.2%、90.4%であった。一方で、手術件数が最も少なかったのは徳島県(261件)、鳥取県(279件)、高知県(301件)であり、腹腔鏡率は100%、100%、86.0%であった。腹腔鏡率は全国的に80%以上と高水準であったが、岐阜県(70.1%)、宮崎県(72.5%)、秋田県(75.3%)、新潟県(75.5%)、富山県(76.6%)では相対的に低値を示した。人口減少が顕著な地域で腹腔鏡率が低いのではないかと推測したが、岩手県、熊本県、佐賀県、鳥取県、徳島県では腹腔鏡率がいずれも100%であり、人口との関連性は認められなかった。
考察・結語:NDBは全国を網羅する悉皆性の高いデータベースであり、全国的傾向の把握に有用であるが、少数例が「-」と表示されることや患者背景の詳細が得られない点が限界である。虫垂切除術は年間5万件以上施行されているが、人口減少や外科医不足、保存的治療の普及、高齢化や併存疾患などの影響か減少傾向にある。腹腔鏡率には地域差がみられ、治療方針の多様化も背景にある。これらの地域差は医療資源や教育体制の今後の整備において重要な示唆を与える。