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[III-P01-1-06]緊急心房中隔裂開術を行ったlevoatriocardinal veinを伴う心房中隔欠損のない左心低形成症候群の1例

野村 羊示1, 菅原 沙織1, 太田 隆徳1, 山田 佑也1, 伊藤 諒一1, 田中 優1, 今井 祐喜1, 鬼頭 真知子1, 河井 悟1, 安田 和志1, 村山 弘臣2 (1.あいち小児保健医療総合センター 循環器科, 2.あいち小児保健医療総合センター 心臓血管外科)
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Keywords:

左心低形成症候群,levoactriocardial vein,BAS

【背景】心房中隔欠損を伴わない左心低形成症候群(HLHS/IAS)ではlevoatriocardinal vein(LACV)が肺静脈と体静脈の側副血行路として発達することがあり、左房減圧経路として機能する。LACVの診断はHLHS治療の術前計画において重要である。今回、出生後にLACV/IASと診断されたHLHSに対し、RF wireを用いた緊急心房中隔裂開術(BAS)を行った症例を経験した。
【症例】妊娠34週5日に当院へ紹介され、HLHS(MA/AA)と診断したが、胎児期に左房周囲から無名静脈方向へ還流する静脈が見られていた。在胎38週2日、体重2519gで出生した。出生後IASのため肺うっ血が増悪した。胎児期の異常血管は造影CTで、右肺静脈から無名静脈へ還流するLACVと診断したが、外科手術を待つ時間がなく、RF wireを用い心房中隔作成を行った。RF wireでBrockenbrough法を行い、Sterling4mm×20mmによるstatic BAS、続いてZ-5(9.5mm)によるRashkind法を追加した。さらにSterling10mm×20mmでstatic BASを追加し、心房間圧較差は治療前の22mmHgから1mmHgまで改善した。BAS後、エコーでのLACV血流の乱流は消失し、生後2か月のNorwwod手術まで心房間交通の狭小化はなかった。生後7か月に無名静脈の閉塞が見られたが、Glenn手術時に側副血行路としてのlevoatriocardinal veinを上大静脈へ吻合した。現在Fontan手術待機中である。
【考察】HLHS/IASでは出生後の緊急治療の準備が必要だが、胎児期からLACVの合併には配慮が必要である。RF wireを用いたstatic及びRashkind法によるBASは、出生直後の外科手術を避けることができ有用と考えられた。左房の減圧後、カラードプラーでLACVの乱流波形は消失し、LACV血流評価はBASの効果の判定になることが示唆された。Glenn手術時も閉塞したinno.Vの側副血行路としてLACVを利用でき、LACVの目立つHLHSではLACVを念頭に置いた治療が重要と考えられた。