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[II-SPS-1]Keynote Lecture : FALDの病態:うっ血肝モデルマウスと肝癌の全ゲノム解析による肝線維化・発癌機序の解明

考藤 達哉 (国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 肝炎・免疫研究センター)
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Keywords:

FALD,肝癌,全ゲノム解析

Fontan術を施行された後に、慢性うっ血肝から肝硬変・肝癌を発症する症例がある(FALD)。肝発癌例と非発癌例の判別は、患者の生命予後に直結するが、その診断方法や治療法は確立されていない。
私たちはFALDモデルとして慢性うっ血肝を来すマウスを作製し、肝線維化と発癌機序を検討した。その結果、うっ血肝の病態では、1)肝臓の辺縁側優位にうっ血/線維化/ 腫瘍形成が生じること、2)門脈LPSにより毛細血管化した肝類洞壁内皮細胞由来の脂質メディエーターSphingosine-1-phosphate(S1P)がS1P受容体を介してうっ血性肝癌を誘導すること、3)腸管殺菌(抗生剤投与)によって肝線維化と腫瘍形成が抑制されることを明らかにした<font size="1">(</font>Kawai H, Kanto T, et al. Hepatology, 2022)。
また、FALD肝癌、FNH切除例を対象にWGSを試行し、コピー数異常と構造変異を同定した。FALD肝癌のTMBは他要因の肝癌と同等であったが、短い配列の挿入や欠失が有意に多かった。COSMICシグネチャーでは、DNA二重鎖切断修復に関連するシグネチャーや、原因不明のシグネチャーが増加していた。TP53、CTNNB1、TERTプロモーターの変異は認めなかったが、AXIN1の変異が確認された。さらに構造異常(欠失・転座)の頻度は、通常の肝癌よりも有意に高かった。特に、染色体1番の短腕欠失・長腕重複、および染色体16番長腕の欠失が、ほぼ全例で認められた。これがFontan術後における発癌の共通のトリガーとなっている可能性が示された。分子サブタイプでは予後不良のProgenitorに合致した。また、細胞増殖に関与するFGFR2、FGFR3の発現が高く、これらが治療標的となる可能性が示された<font size="1">(</font>Yamazoe T, Kanto T, et al. Hepatology, 2026)。
FALD肝癌は他の肝癌とは異なる遺伝子背景を持ち、増殖の旺盛な悪性型の形質を獲得している。DNA二重鎖切断は虚血再灌流等により誘発されることから、Fontan循環の安定化が発癌予防に寄与する可能性が示唆された。