Presentation Information
[II-SY6-6]肺動脈性肺高血圧症患者における、セレキシパグレスポンダーの背景を探る
○永井 礼子1, 佐藤 弘樹2,3, 赤川 浩之4, 佐々木 大輔1, 山澤 弘州1, 佐藤 隆博5,6, 辻野 一三6, 武田 充人7 (1.北海道大学病院 小児科, 2.大分大学 循環器内科・臨床検査診断学講座, 3.大分大学医学部附属病院 災害マネジメント総合支援センター, 4.東京女子医科大学 総合医科学研究所, 5.北海道大学大学院 医学研究院 呼吸器内科学教室, 6.北海道大学大学院 医学研究院 呼吸・循環イノベーティブリサーチ分野, 7.北海道大学大学院 医学研究院 生殖・発達医学分野 小児科学教室)
Keywords:
肺動脈性肺高血圧症,全エクソーム解析,メタボローム解析
【背景】セレキシパグはIP受容体に選択的に作用する経口肺血管拡張薬である。我々はセレキシパグによって肺動脈圧が著明に低下し、エポプロステノール持続静注からの離脱を果たした肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension: PAH)の小児例を経験した(Front Pediatr 2022)。この経験から我々は、セレキシパグが非常に奏功しやすいPAH患者が存在する可能性があるのでは、そしてオミックス解析を行うことでその原因を突き止め、診療に応用できるのではないかと考え、本研究を立案した。【方法】2021~2024年に北海道大学病院でセレキシパグ投与を開始された、16歳以上のPAH患者15例を対象とした。セレキシパグ開始前後のWHO分類、心臓カテーテル検査、6分間歩行距離、心臓MRI検査、心臓超音波検査の改善度に基づき、対象をhigh-responder群(HR群。n=8)、standard-responder群(SR群。n=7)に分類した。次に全エクソーム解析、血漿メタボローム解析を実施した。【結果】全エクソーム解析では2群間に有意差は認めなかった。メタボローム解析では各種アシルカルニチン濃度が、SR群と比較してHR群において有意に高値であった。これを基に全エクソーム解析結果を見直したところ、CPT2 rs1799821 AA遺伝子型が、HR群で有意に高い頻度で検出された。さらにHR群の代謝物プロファイリングに基づいたIngenuity Pathway Analysisでは同群におけるATP citrate lyase (ACLY)・fatty acid synthase(FASN)の抑制と、CPT1Cの活性化が予測された。【結論】CPT2 rs1799821 AA遺伝子型、ACLY・FASN・CPT1Cの発現変化は脂肪酸代謝を障害し、プロスタサイクリン産生を低下させる可能性がある。その結果、HR群においてはセレキシパグに対する治療反応性が高まる可能性が示唆された。この研究結果はPAH患者に対するセレキシパグ投与の判断の根拠となる可能性があり、PAH診療における新たな治療戦略の構築に貢献するものである。
