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[SY14]シンポジウム14_自閉スペクトラム症成人のコミュニケーション定量解析

Thu. Jun 19, 2025 8:30 AM - 10:30 AM JST
Thu. Jun 19, 2025 11:30 PM - 1:30 AM UTC
E会場(神戸国際会議場 4階 402会議室)
司会:中村 元昭(昭和医科大学)、長井 志江(東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構)
メインコーディネーター:中村 元昭(昭和医科大学)
サブコーディネーター:長井 志江(東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構)
自閉スペクトラム症(ASD)当事者の臨床像は横断的にも縦断的にも異種性が高い。それ故に診断名だけでは個別理解や支援方針が定まらず、個別の評価が重要となる。ASDの個別評価のために開発された検査バッテリーが、ADOS(Autism Diagnostic Observation Schedule)である。現在はその2版であるADOS-2が標準化され、診断や支援のゴールドスタンダードとして世界的に汎用されている。
ADOS-2は被験者と検査者が対面で行う1時間程度の半構造化された観察検査である。表出性言語水準と生活年齢層によって5つのモジュールが区別されており、言語を流暢に話す青年期後期から成人期ではモジュール4を使用する。モジュール4は、15の課題から構成され、32の評定項目が評価され、その内16の評定項目を用いてアルゴリズム得点(意思伝達、相互的対人関係、想像力/創造性、常同行動と限定的興味)を算出する。アルゴリズム得点によって、3種類のADOS-2診断分類(自閉症、自閉症スペクトラム、非自閉症スペクトラム)に分けられ、診断補助に用いられる。
昭和大学発達障害医療研究所では、ADOS-2リサーチライセンス取得者による検査が実施されている。研究参加の同意とビデオ撮影の同意が取得できた場合、検査実施中の高画質ビデオ記録(解像度:2K)を研究データとして取得している。現在までに定型発達者を含む350名以上のADOS-2のビデオデータが蓄積されており、モジュール4では世界最大規模の研究データである。我々はムーンショット型研究開発事業(目標9)において、文理融合型の研究チームを構成し、ADOS-2ビデオの定量解析に取り組んでいる。従来のADOS-2は専門家による定性評価を数値化して診断アルゴリズムに当てはめているが、検査中の2者間のやり取りそのものを定量評価している点が本研究の新規的な側面である。
本シンポジウムでは、ADOS-2ビデオデータの定量解析の一部を報告し、臨床的な議論を展開するのが主な目的であるが、基礎科学への波及についても議論したい。より具体的には、ADOS-2モジュール4の評定項目やその他の心理指標を用いたASD当事者の層別化について提示して、支援ニーズとの関連性を議論したい。次に映像データの定量解析によって、非言語的表現における2者間の相互性や同期性を議論する。さらに、音声データと文字起こしされたテキストデータを用いた解析では、言語科学的解析に加えて、大規模言語モデル(LLM)を用いた解析結果を提示したい。指定発言として、ADOS-2の国内第一人者である黒田美保先生、ASD支援の専門家である内山登紀夫先生から解析結果に関する臨床的なフィードバックを得たい。この一連のADOS-2ビデオ研究の目指す方向性はASD当事者一人一人の個別理解や個別支援を促進することにある。

[SY14-1]自閉スペクトラム症成人の診断と評価

中村 元昭, 直江 大河, 井上 舞依子, 武田 小百合, 鹿内 友美, 沖村 宰, 太田 晴久 (昭和医科大学)

[SY14-2]Quantitative Analysis of Multimodal Communication Patterns in Adults with Autism Spectrum Disorder(ASD)

Von Ralph Dane M. Herbuela1, Taiga Naoe2, Yumi Shikauchi2, Motoaki Nakamura2, Yukie Nagai1 (1.International Research Center for Neurointelligence (IRCN), The University of Tokyo, 2.Medical Institute of Developmental Disabilities Research, Showa Medical University)

[SY14-3]言語・音声データから見えてくるコミュニケーション様式 ~言語科学の立場から~

保前 文高, パク ウンビ, 粕谷 美里 (東京都立大学人文社会学部)

[SY14-4]大規模言語モデルを用いた定量的会話特徴の探索

張山 昌論1, 中村 有紗1, 中村 元昭2, 鹿内 友美2, 直江 大河2 (1.東北大学大学院情報科学研究科, 2.昭和医科大学発達障害医療研究所)

[指定発言]指定発言

黒田 美保 (田園調布学園大学)

[指定発言]指定発言

内山 登紀夫 (福島学院大学)