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[SY46]シンポジウム46_精神科医は「意識」をどう見ているか? -多様な専門的視点から考える

Thu. Jun 19, 2025 6:00 PM - 8:00 PM JST
Thu. Jun 19, 2025 9:00 AM - 11:00 AM UTC
O会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1階 生田)
司会:西原 真理(愛知医科大学病院いたみセンター)、兼本 浩祐(愛知医科大学精神科学講座)
メインコーディネーター:西原 真理(愛知医科大学病院いたみセンター)
サブコーディネーター:兼本 浩祐(愛知医科大学精神科学講座)
オンデマンド配信対象外
このシンポジウムの目的は精神科医にとって「意識」は何を意味しているのかについて考え、掘り下げることである。このため、精神医学の中で異なる分野において活躍する専門家を集め、直接的とは言えなくても今後の精神科臨床に役立つような議論を行いたい。
そもそも意識とは一体何なのか?これは一般的に言っても人間存在の根本的な問題であり、自分の意識はどこにあるのか?他人はどのような世界にいてどう感じ、どう考えているのか…といったことはすべての人が感じたことがある疑問であろう。実際、意識論は神経科学の領域でも最も深淵なるテーマとされ、所謂ハードプロブレムとして検討され続けている。また最近ではにわかに我々の現実に接近してきた人工知能が意識をもつのではないかとの憶測もまったく絵空事には思えない時代になった。
しかしながら脳に起因すると考えられている病を扱う我々精神科医にはもう少し異なる視点から意識の問題を考えることが可能なのではないかと思われる。つまり、精神科医が意識について語ることには意味があると思え、そういった流れも評価を受けてきている(兼本浩祐:脳を通って私が生まれるとき、など)。しかし意識についてはどうしても多くの幅広い専門的見方が必要であり今回のシンポジウム企画へとつながった。
まず、医学的、生物学的意識レベルについてであるが、せん妄状態の患者と対峙しているときには最重要で欠かすことの出来ない評価項目であることは言うまでもない。また、意識レベルが不安定な状態にあると興奮、幻覚、妄想、不安…すなわちありとあらゆる精神症状を生み出しうるが、これも精神科医は日常的に観察しているところである。このような視点から意識がどう生まれ、どのように変化しうるのかを考えることには一定の意味がある。ただ、精神科医が意見すべき最重要テーマはヒステリーなどの文脈から意識についてであることは間違いない。ヒステリーという用語はオフィシャルには使われなくなって久しいがConversionやDissociation、またSomatizationといった意識と切っても切り離せない現象の源流である。これらの現象は科学的な証明が極めて困難であるが、精神科医にとって厳然として存在している。ここについてフロイトやクレッチマーの心理的な理論だけではなく、神経科学的な理論との統合を目指すことはこれからの精神科医にとっての果たすべき役割ではないかと思われる。
今回のシンポジウムでは、てんかん、PNES(Psychogenic non-epileptic seizures)、身体症状症など疾患ベースの専門家だけではなく、精神病理学、精神分析学、精神神経免疫学、神経生理学など心理領域と神経科学領域にまたがるスペシャリストが登壇する予定である。この中で意識問題について精神科医の見方を整理し、今後の精神科臨床につなげたい。

[SY46-1]精神科医からみた「意識」-感覚神経生理の視点から

西原 真理 (愛知医科大学病院)

[SY46-2]解離における意識障害

兼本 浩祐 (中部PNESリサーチセンター)

[SY46-3]フロイトの無意識的欲動と脳内免疫細胞:ミクログリアは「死の欲動」を司る?

加藤 隆弘 (北海道大学大学院医学研究院神経病態学分野精神医学教室)

[SY46-4]意識とAI、そして神経精神分析

久保田 泰考 (滋賀大学保健管理センター)

[SY46-5]脳波で考える「意識」:精神科診療への示唆

西田 圭一郎 (大阪医科薬科大学精神神経医学教室)