Session Details
[SY60]シンポジウム60_認知症~新旧の革新的病態パラダイム~
Fri. Jun 20, 2025 8:30 AM - 10:30 AM JST
Fri. Jun 20, 2025 11:30 PM - 1:30 AM UTC
Fri. Jun 20, 2025 11:30 PM - 1:30 AM UTC
C会場(神戸国際会議場 3階 レセプションホール)
司会:橋岡 禎征(旭川医科大学精神医学講座)、新井 哲明(筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学)
メインコーディネーター:橋岡 禎征(旭川医科大学精神医学講座)
サブコーディネーター:新井 哲明(筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学)
メインコーディネーター:橋岡 禎征(旭川医科大学精神医学講座)
サブコーディネーター:新井 哲明(筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学)
認知症患者数は2030年に、わが国で750万人、世界では7500万人にも及ぶとされており、世界規模の社会問題となっている。しかし、認知症の主な原因疾患となる神経変性疾患の根治的治療法は未だ確立されておらず、病態メカニズムの解明、およびそれに基づいた新規治療法の確立が喫緊の課題である。
1980年代、アルツハイマー病の病変部位に活性化したグリアが認められるという病理学的発見と、抗炎症剤を常に服用しているリウマチ患者は、アルツハイマー病の罹患率が低いという疫学的発見から、「活性化したグリアが引き起こす脳内の慢性炎症が神経細胞を傷害する」とする神経炎症仮説が提唱された。提唱された当初はまだ無菌性炎症の概念も確立されておらず、グリアの活性化は神経細胞死に対する副次的反応に過ぎないという考えが主流だったため、学術的に受け入れられ難い状況であった。しかしその後、活性化グリアは、アルツハイマー病のみならず、パーキンソン病、多発性硬化症といった種々の神経変性疾患の病変部位にも存在することが明らかになり、今では中核的病態とは言えないまでも、神経変性疾患に共通したdriving forceとして広く認識されるようになった。また近年、末梢組織における慢性炎症が、中枢神経系に影響を及ぼし、神経炎症を惹起することが明らかになっている。中でも成人の半数以上が罹患しているとも言われ、最も罹患率の高い慢性炎症疾患である歯周病とアルツハイマー病との相関性が注目を集めている。
一方、2010年代には「異常立体構造を持つ病原タンパク質が、正常タンパク質を異常型に変換して神経回路を介して脳全体に広がっていく」という仮説が提唱された。まさにこれは感染性を有するプリオンと高い相同性を持つ概念であり、異常型タンパク質のプリオン様伝播と呼ばれている。これは神経変性疾患においてどのように病変が広がっていくのか、具体的には細胞内にあり、細胞膜で包まれている異常型タンパク質が他細胞に伝播していくことがはたして可能なのか、といった謎を解き明かす上でブレイクスルーとなる概念である。実際、アルツハイマー病、レビー小体病患者の神経細胞内に蓄積するタウ、αシヌクレインの線維は、異常型プリオンと同様にβシートに富む構造であることが分かっている。また患者脳から抽出したタウの凝集線維、αシヌクレインの凝集線維をマウス脳に注入する動物実験では、各タンパク質の凝集線維の蓄積、伝播が再現されている。
本シンポジウムでは、新旧の革新的病態パラダイムとも呼べる神経炎症と病原タンパク質のプリオン様伝播について、最新の知見をもとに討議を行う。
1980年代、アルツハイマー病の病変部位に活性化したグリアが認められるという病理学的発見と、抗炎症剤を常に服用しているリウマチ患者は、アルツハイマー病の罹患率が低いという疫学的発見から、「活性化したグリアが引き起こす脳内の慢性炎症が神経細胞を傷害する」とする神経炎症仮説が提唱された。提唱された当初はまだ無菌性炎症の概念も確立されておらず、グリアの活性化は神経細胞死に対する副次的反応に過ぎないという考えが主流だったため、学術的に受け入れられ難い状況であった。しかしその後、活性化グリアは、アルツハイマー病のみならず、パーキンソン病、多発性硬化症といった種々の神経変性疾患の病変部位にも存在することが明らかになり、今では中核的病態とは言えないまでも、神経変性疾患に共通したdriving forceとして広く認識されるようになった。また近年、末梢組織における慢性炎症が、中枢神経系に影響を及ぼし、神経炎症を惹起することが明らかになっている。中でも成人の半数以上が罹患しているとも言われ、最も罹患率の高い慢性炎症疾患である歯周病とアルツハイマー病との相関性が注目を集めている。
一方、2010年代には「異常立体構造を持つ病原タンパク質が、正常タンパク質を異常型に変換して神経回路を介して脳全体に広がっていく」という仮説が提唱された。まさにこれは感染性を有するプリオンと高い相同性を持つ概念であり、異常型タンパク質のプリオン様伝播と呼ばれている。これは神経変性疾患においてどのように病変が広がっていくのか、具体的には細胞内にあり、細胞膜で包まれている異常型タンパク質が他細胞に伝播していくことがはたして可能なのか、といった謎を解き明かす上でブレイクスルーとなる概念である。実際、アルツハイマー病、レビー小体病患者の神経細胞内に蓄積するタウ、αシヌクレインの線維は、異常型プリオンと同様にβシートに富む構造であることが分かっている。また患者脳から抽出したタウの凝集線維、αシヌクレインの凝集線維をマウス脳に注入する動物実験では、各タンパク質の凝集線維の蓄積、伝播が再現されている。
本シンポジウムでは、新旧の革新的病態パラダイムとも呼べる神経炎症と病原タンパク質のプリオン様伝播について、最新の知見をもとに討議を行う。
[SY60-1]全身炎症によるミクログリア活性化のアルツハイマー病に寄与するメカニズム
○武 洲1,2 (1.九州大学大学院歯学研究院口腔機能分子科学, 2.九州大学大学院歯学研究院OBT研究センター)
[SY60-2]神経炎症における活性化アストロサイトの神経毒性
○橋岡 禎征 (旭川医科大学精神医学講座)
[SY60-3]タウの伝播とその動物モデル
○細川 雅人1,2, 鈴掛 雅美2, 長谷川 成人2 (1.福岡大学薬学部, 2.東京都医学総合研究所認知症プロジェクト)
[SY60-4]αシヌクレインの伝播とその制御:伝播モデル動物を用いた解析から
○鈴掛 雅美 (東京都医学総合研究所認知症プロジェクト)
[指定発言]指定発言
○新井 哲明 (筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学)