Session Details
[SY64]シンポジウム64_生死に関わる意思決定の臨床倫理
Fri. Jun 20, 2025 8:30 AM - 10:30 AM JST
Fri. Jun 20, 2025 11:30 PM - 1:30 AM UTC
Fri. Jun 20, 2025 11:30 PM - 1:30 AM UTC
D会場(神戸国際会議場 4階 401会議室)
司会:水野 雅文(社会医療法人あさかホスピタル)、藤井 千代(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
メインコーディネーター:藤井 千代(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
サブコーディネーター:石川 博康(医療法人弘仁会島田病院)、稲生 宏泰(地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立松沢病院)
メインコーディネーター:藤井 千代(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
サブコーディネーター:石川 博康(医療法人弘仁会島田病院)、稲生 宏泰(地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立松沢病院)
医療倫理委員会
精神科臨床において、身体的に危機的状況にある精神疾患患者が生死に関わる治療を選択する場面や、生命維持に必要な治療を本人が拒否する場面では、医療従事者は大きなジレンマに直面する。治療の必要性等について十分に理解する能力や、自身の意思を正確に表明する能力が疑わしい場合、十分な意思決定支援を行ったうえで本人の自己決定を可能な限り尊重することが求められる。しかし、そもそも本人の意思決定能力をどのように適切に評価すべきか、また自己決定権と生命権、健康権が対立する場合に医療従事者はどのようにこれらの権利を尊重すべきか、明確な答えを見出すことは難しい。 個人が他者や社会に不利益を及ぼさない範囲で、自らの判断に基づきリスクを伴う行為を選ぶ権利は「愚行権(right to folly)」と称される。たとえその選択が他者から見て「非合理的」あるいは「危険」と判断されるものであっても、患者の意思を尊重することは自律尊重の核心部分である。しかし、精神疾患が意思決定に与える影響を考慮するとき、患者が十分な意思決定能力を有しているか、その意思が単なる衝動や病状の影響あるいは他からの強制ではなく、確かな個人の意思に基づくものであるかを慎重に評価する必要がある。この評価は非常に繊細であり、意思決定能力が損なわれているかどうかの判断が容易でない状況も多い。たとえば神経性やせ症のケースにおいて、本人が極度の体重減少や栄養不良で生命の危機にさらされているにもかかわらず、治療拒否の意思を強く示すことは珍しくない。このような状況において、治療の必要性に関すること以外の事柄については本人の意思決定能力が保たれていることも少なくなく、どこまで本人の意思を尊重すべきなのか、生命維持のための治療を強制することが容認されるのかどうかを適切に判断することは非常に難しい課題である。また、精神医療現場における「治療の無益性(医学的無益性)」に関する判断やその倫理的意味合いについても議論が必要である。 本シンポジウムでは、生死に関わる意思決定をめぐる具体的なケースを通じて、精神医療従事者が医療倫理の視点からどのように対応すべきかを多角的に議論する。近年、総合病院等において、精神科リエゾンチームによる意思決定支援や臨床倫理コンサルテーションの取り組みが広まりつつあることを踏まえ、倫理コンサルテーションの実践とその課題にも着目し、精神科と身体科が共に治療に関わる複雑な状況における意思決定支援体制のあり方についても考察する。また、患者の自己決定権を尊重しつつも、治療の必要性や医学的無益性を考慮した対応が求められる場面において、医療倫理の観点からの考察を加える。 本シンポジウムを通じて、精神疾患患者が生死に関わる意思決定を行う際に直面する課題に対する理解を深め、医療倫理の視点から、より良い対応策を探求するための議論の場としたい。
[SY64-1]摂食障害診療における強制医療と医療倫理の問題、実臨床での対応
○山田 恒 (兵庫医科大学)
[SY64-2]終末期医療におけるサイコオンコロジーの経験-自戒を込めて
○明智 龍男 (名古屋市立大学大学院医学研究科)
[SY64-3]防衛医科大学校病院における臨床倫理コンサルテーションチームと精神科の関わり
○松井 茉莉江, 戸田 裕之 (防衛医科大学校病院)
[SY64-4]精神疾患を有する者の非救急場面における生死に関わる意思決定の応用倫理
○稲生 宏泰 (地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立松沢病院)