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[SY69]シンポジウム69_ライフステージを通した強度行動障害の地域支援体制の発展を目指して

Fri. Jun 20, 2025 10:45 AM - 12:45 PM JST
Fri. Jun 20, 2025 1:45 AM - 3:45 AM UTC
E会場(神戸国際会議場 4階 402会議室)
司会:會田 千重(独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター)、岡田 俊(奈良県立医科大学精神医学講座)
メインコーディネーター:會田 千重(独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター)
サブコーディネーター:岡田 俊(奈良県立医科大学精神医学講座)
「強度行動障害」の概念は福祉分野で1980年代後半に定義され、医学的診断名は重度・最重度知的障害を伴う自閉スペクトラム症が多い。令和4年度には「強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会」が開かれ、報告書の「強度行動障害を有する者の地域における支援体制の在り方」の項では、「医療との連携体制の構築」として「地域の支援ネットワークの中での精神科医療」「身体疾患の治療」の必要性が明記された。
令和3年度の調査研究で1年間に障害支援区分認定調査を受けた267,569件分のデータのうち、行動関連項目の合計点が10点以上の「強度行動障害」該当者は約15%(40,135人)、20点以上の人は約1.2%であった(3,210人)。また障害福祉サービス・障害児支援において、強度行動障害関連の支援や加算の対象は、令和5年10月時点でのべ89,434人となっている。福祉領域では2013年度に開始された「強度行動障害支援者養成研修」の修了者が令和2年度までで基礎研修87,423人、実践研修46,087人を数え、令和6年度の報酬改定をうけて「中核的人材」「広域的支援人材」の養成・認定も始まっている。
各地域では福祉サービスのみで強度行動障害の対応は不可能で、現に日本精神科病院協会施設では2年以上の知的・発達障害長期入院患者が2.8%(田渕・市川ら、2016)、2.3%(會田ら、2023年)見られ、精神科救急病棟約100施設の入院患者の障害種別で、知的・発達障害患者が1%程度というデータもある(2020年度特別調査)。またセーフティーネット的に古くから対応してきた国立病院機構精神科病院「療養介護病棟」9施設の精神科病院には、2024年8月時点で35都府県の患者436名が契約入所中で、待機者も計120名となっている。
福祉や医療すらも享受できない潜在的要支援(治療)者の存在は、家族による長期監禁事件(田中ら、2019)や保護者の自殺という悲劇的な結果を生じることもある。障害者虐待の被虐待者のうち「行動障害がある者」の割合が養護者の虐待の28.9%、障害者福祉施設従事者等の虐待の30.6%というデータがあり(厚生労働省,2022)、福祉事業所での対応困難・職員の離職などの問題も表面化してきている。
本学会でも2019年から定期的にシンポジウムを行ってきた上記課題について、「ライフステージを通した強度行動障害の地域支援体制の発展を目指して」と題し、地域の精神科医療機関での現状(安藤氏)、県自立支援協議会強度行動障害支援部会等を通じた福祉・教育・行政との協働と精神科救急医療での役割(来住氏)、児童期から成人期以降までの治療の考え方(吉川氏)、院内の多職種協働と多機関連携(山下氏)、について述べる。指定発言としては、厚生労働省(西尾氏)やこども家庭庁(今出氏)の立場から強度行動障害に対し医療に求めること、強度行動障害の医療必要性と施策への提言(市川氏)を言及して頂く。
発表は参考事例を含むが個人情報を特定出来ないよう配慮し、患者が重度知的障害のため保護者または成年後見人から症例報告に関する口頭同意を得た。

[SY69-1]強度行動障害の医療~地域の精神科医療機関での現状

安藤 直也 (千曲荘病院)

[SY69-2]県自立支援協議会強度行動障害支援部会等を通じた福祉・教育・行政との協働、そして精神科救急医療での役割

来住 由樹 (地方独立行政法人岡山県精神科医療センター)

[SY69-3]成人期を見据えた児童期からの治療

吉川 徹 (愛知県尾張福祉相談センター)

[SY69-4]強度行動障害児者に対する医療機関における取り組み―クライシスプランとクリニカルパスの応用―

山下 健1, 下村 拓也2 (1.独立行政法人国立病院機構さいがた医療センター, 2.独立行政法人国立病院機構琉球病院)

[指定発言]指定発言

西尾 大輔 (厚生労働省)

[指定発言]指定発言

今出 大輔 (こども家庭庁)

[指定発言]指定発言

市川 宏伸 (一般社団法人日本発達障害ネットワーク)