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[SY91]シンポジウム91_幼少期の体験と精神症状の形成

Fri. Jun 20, 2025 8:30 AM - 10:30 AM JST
Fri. Jun 20, 2025 11:30 PM - 1:30 AM UTC
O会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1階 生田)
司会:岡田 俊(奈良県立医科大学精神医学講座)、今村 明(長崎大学生命医科学域保健学系作業療法学分野)
メインコーディネーター:小野 和哉(聖マリアンナ医科大学神経精神医学教室)
サブコーディネーター:笠原 麻里(駒木野病院)
児童精神科医療研修委員会
幼少期の体験は、思春期以降の種々の精神疾患や障害群の精神症状形成に影響を及ぼすものと考えられるが、それが具体的にどのような関係にあるのかは、必ずしも明確ではない。古くはフロイトが、神経症患者の症状出現の背後に、無意識の葛藤や外傷体験を見出し、治療の方法論を構築したが、その後外傷体験が空想に過ぎないとして外傷論は一時下火になった。しかし、戦争体験を基盤として戦争神経症が唱えられ、心的外傷という「体験」が精神疾患と結びつくことが再び認められるようになった。さらに、1980年のDSMⅢよりPTSD( Post-Traumatic Stress Disorder)が心的外傷に基づく障害として登場した。心的外傷の内容は、DSMの診断クライテリアでは限局されたものであったが、その後、それほどに限定されない種々の心的外傷体験の意義も認識されるようになり、複雑性PTSDという概念が2018年のICD-11で初めて採用された。この様な「体験」の積み重ねという「状況」の中に生じてくる病態の重要性は今日において益々注目されるようになっており、心的外傷体験に限らず、子ども時代の体験や病態が、基盤にあると考えられる様々な精神疾患が想定されている。従って、思春期以降の病態の起源にどのような子どもの病理があるのかを知ることは、早期介入の糸口を見出すことはもちろん、成人期を中心として治療する一般精神科臨床においても重要な治療的視座をもたらす可能性があると言えるだろう。具体的には、症状の形成過程という時間軸の中で、子どもが経験する次の様な体験、①子ども時代の様々な環境からくる体験(核家族・貧困等)、②いわゆる心的外傷に至るような体験(ネグレクトや虐待)、さらには③子ども時代の精神病症状の体験、④幼少期から発達課題を持って成育する中でパーソナリティが形成されていく体験、などが考えられる。そこで本シンポジウムでは、現在までのエビデンスや演者らの臨床知見に基づき、多角的視点から現時点での、子どもの病理からみた病態理解の視座を明らかにし、改めて子ども時代の体験の意味を検討したいと考えている。具体的には、笠原麻里が、子どもを取り巻く環境の変化を中心に、八木淳子が、子どもの外傷体験との関連を、船渡川智之は精神病と子どもの精神病症状との関連について、小野和哉が、発達課題とパーソナリティ形成の関係について、各々の立場から講演を行い、さらに指定発言を大重 耕三が行い、議論を深めていくこととしたい。

[SY91-1]子どもを取り巻く環境と、その変化

笠原 麻里 (駒木野病院)

[SY91-2]幼少期のトラウマ/逆境的体験がもたらす長期的影響:発達精神病理学的視点から

八木 淳子1,2 (1.岩手医科大学医学部神経精神科学講座, 2.岩手医科大学附属病院)

[SY91-3]小児期における精神病症状の長期予後と治療的介入に迫る:成人期支援までを見据えた臨床的考察

舩渡川 智之 (東邦大学医学部医学科精神神経医学講座)

[SY91-4]小児期の発達特性とパーソナリティ形成

小野 和哉 (聖マリアンナ医科大学神経精神医学教室)

[指定発言]指定発言

大重 耕三 (岡山県精神医療センター)