Session Details
[SY98]シンポジウム98_改正大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法の意義と課題、ならびに薬物依存症臨床への影響
Fri. Jun 20, 2025 8:30 AM - 10:30 AM JST
Fri. Jun 20, 2025 11:30 PM - 1:30 AM UTC
Fri. Jun 20, 2025 11:30 PM - 1:30 AM UTC
Q会場(神戸国際展示場 1号館 2階 展示室B)
司会:成瀬 暢也(埼玉県立精神医療センター)、松本 俊彦(国立精神・神経医療研究センター)
メインコーディネーター:松本 俊彦(国立精神・神経医療研究センター)
サブコーディネーター:成瀬 暢也(埼玉県立精神医療センター)
メインコーディネーター:松本 俊彦(国立精神・神経医療研究センター)
サブコーディネーター:成瀬 暢也(埼玉県立精神医療センター)
2024年12月12日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」が施行される。この法改正のポイントは次の4点に要約できる。
第1に、大麻由来成分を含む医薬品の使用禁止規定を削除し、安全性と有効性が確認されたものに限り、医療分野で活用できるようになることである。これにより、小児の難治性てんかんに対する治療効果が認められ、すでに欧米諸国で小児の難治性てんかん治療薬として承認されている大麻成分由来医薬品(Epidiolex)が、わが国でも使用可能となる。もちろん、治験ならば旧法下でも使用可能であったが、旧法第4条は、「大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること」を規制しており、通常の医療において処方することはできなかった。
第2に、大麻を「麻薬」に位置付けることで、他の規制薬物と同様に、大麻にも新たに使用(施用)罪が導入されることである。大麻が「麻薬」とされたことによって、所持罪などの法定刑が重くなり、全体として大麻関連犯罪に対する厳罰化となっている。この点は、法案準備段階の厚生労働省委員会において議論が紛糾した部分であり、当時、学識経験者の一部からは、使用罪創設には立法根拠がなく、国際的潮流にも逆行するものではないかとの批判的意見も出た。確かに、現在、50以上の国と地域が医療用大麻を、ウルグアイ、カナダ、ドイツなどでは嗜好的使用を認めている。また、連邦政府としては大麻を禁じている米国でさえも、州単位では大麻に対する寛容政策へと舵を切っており、すでに38州が医療的使用を、そして24州およびワシントン特別区が嗜好的使用を認めている状況にある。
第3に、大麻草の栽培に関する規制が見直され、厳格な条件のもと、医療や産業用途での栽培が許可されるようになること、それから第4として、従来の大麻草部位規制に代わって、THC(Tetrahydrocannabinol)成分の含有量規制となり、CBD(Cannabidiol)製品のTHC含有量に関して明確な基準が設定されることである。これらによって、CBD産業の活性化が期待されているが、他方で、現在政府から提示されている基準値は、欧米諸国の水準に比べて突出して低く、CBD産業にとっては予期せぬ障壁となる懸念も否めない。
さて、本シンポジウムの目的は2つある。1つは、大麻由来医薬品の抗てんかん薬としての可能性と開発状況、CBD産業に与える影響、国際的な大麻政策の動向、および大麻関連精神障害の臨床的特徴に関して、最新の知識・情報を提供し、本学会員のあいだで共有する機会を作ることである。そしてもう1つは、近年着実に「刑罰より治療へ」が進みつつあった薬物依存症臨床に、今回の法改正がいかなる影響を及ぼすのか、その課題と懸念点について議論を深めることである。
登壇者はいずれも当該分野に関する第一人者であり、意義あるシンポジウムになることが期待される。
第1に、大麻由来成分を含む医薬品の使用禁止規定を削除し、安全性と有効性が確認されたものに限り、医療分野で活用できるようになることである。これにより、小児の難治性てんかんに対する治療効果が認められ、すでに欧米諸国で小児の難治性てんかん治療薬として承認されている大麻成分由来医薬品(Epidiolex)が、わが国でも使用可能となる。もちろん、治験ならば旧法下でも使用可能であったが、旧法第4条は、「大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること」を規制しており、通常の医療において処方することはできなかった。
第2に、大麻を「麻薬」に位置付けることで、他の規制薬物と同様に、大麻にも新たに使用(施用)罪が導入されることである。大麻が「麻薬」とされたことによって、所持罪などの法定刑が重くなり、全体として大麻関連犯罪に対する厳罰化となっている。この点は、法案準備段階の厚生労働省委員会において議論が紛糾した部分であり、当時、学識経験者の一部からは、使用罪創設には立法根拠がなく、国際的潮流にも逆行するものではないかとの批判的意見も出た。確かに、現在、50以上の国と地域が医療用大麻を、ウルグアイ、カナダ、ドイツなどでは嗜好的使用を認めている。また、連邦政府としては大麻を禁じている米国でさえも、州単位では大麻に対する寛容政策へと舵を切っており、すでに38州が医療的使用を、そして24州およびワシントン特別区が嗜好的使用を認めている状況にある。
第3に、大麻草の栽培に関する規制が見直され、厳格な条件のもと、医療や産業用途での栽培が許可されるようになること、それから第4として、従来の大麻草部位規制に代わって、THC(Tetrahydrocannabinol)成分の含有量規制となり、CBD(Cannabidiol)製品のTHC含有量に関して明確な基準が設定されることである。これらによって、CBD産業の活性化が期待されているが、他方で、現在政府から提示されている基準値は、欧米諸国の水準に比べて突出して低く、CBD産業にとっては予期せぬ障壁となる懸念も否めない。
さて、本シンポジウムの目的は2つある。1つは、大麻由来医薬品の抗てんかん薬としての可能性と開発状況、CBD産業に与える影響、国際的な大麻政策の動向、および大麻関連精神障害の臨床的特徴に関して、最新の知識・情報を提供し、本学会員のあいだで共有する機会を作ることである。そしてもう1つは、近年着実に「刑罰より治療へ」が進みつつあった薬物依存症臨床に、今回の法改正がいかなる影響を及ぼすのか、その課題と懸念点について議論を深めることである。
登壇者はいずれも当該分野に関する第一人者であり、意義あるシンポジウムになることが期待される。
[SY98-1]カンナビノイド医薬品 抗てんかん発作薬としての可能性と開発状況
○太組 一朗1,2 (1.聖マリアンナ医科大学脳神経外科, 2.一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会)
[SY98-2]法改正がカンナビノイド使用者と産業へ与えた影響について
○正高 祐志 (一般社団法人Green Zone Japan)
[SY98-3]科学的な問題点が共有された立法なのか
○園田 寿 (甲南大学名誉教授)
[SY98-4]大麻関連性障害の特徴と法改正による依存症臨床への影響
○野田 哲朗1,2 (1.東布施野田クリニック, 2.大阪人間科学大学)