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[SY112]シンポジウム112_精神医療における身体愁訴 ~東洋医学的解釈と介入~

Sat. Jun 21, 2025 8:30 AM - 10:30 AM JST
Sat. Jun 21, 2025 11:30 PM - 1:30 AM UTC
F会場(神戸国際会議場 4階 403会議室)
司会:中村 元昭(昭和医科大学)、松浦 悠人(東京有明医療大学)
メインコーディネーター:中村 元昭(昭和医科大学)
サブコーディネーター:松浦 悠人(東京有明医療大学)
精神科臨床では、身体愁訴を伴う患者が頻繁にみられる。これらの症状の多くは、「医学的に説明困難な症状(Medically Unexplained Symptoms: MUS)」に分類され、患者のQuality of life(QOL)を著しく低下させる。そのため、適切に対処することが望ましいが、MUSをはじめ精神科領域の身体愁訴に対して症状のコントロールに難渋する事例がしばしば経験される。さらに向精神薬の副作用として自律神経症状がMUSに重畳することも少なくない。
検査所見は全て正常で西洋医学的に説明の難しい身体愁訴や向精神薬の副作用への対処法として東洋医学を用いたアプローチを活用することを提案したい。東洋医学は心と身体をひとつとして捉えている(心身一如)。MUSであっても詳細な問診や東洋医学的な身体診察を実施することにより、東洋医学理論を駆使した漢方薬・鍼灸治療が可能である。近年、鍼灸は世界中で大規模な臨床試験が行われ、カナダのうつ病・不安障害診療ガイドライン(CANMAT)では、鍼灸が軽度から中等度のうつ病の第二選択療法として推奨されるに至っている。さらに、一流科学雑誌に鍼灸のメカニズムに関する論文が掲載され、伝統的な医療技術である鍼灸の科学化が急速に進んでいる。このように鍼灸という古い医術が科学的介入技法として、精神症状にもMUSにも効果がある可能性が期待されている。
本シンポジウムでは、精神医療に東洋医学の視点を取り入れることで、MUSをはじめとする精神科の身体愁訴への古来日本からすでに行われている治療を再導入する可能性を議論する。第一に、精神科臨床にて患者が訴える身体愁訴の実態と精神科医が抱える課題について述べる。次に、精神科臨床で東洋医学的介入がいかにしてMUSの診療に貢献できるか、その意義について議論し、具体的な症例やエビデンスを通じて、鍼灸が精神疾患患者の身体愁訴の緩和にどのように貢献するかを紹介する。その後、最新の研究で明らかにされた鍼灸の生理学的効果とメカニズムを解説する。最後に、精神医療での身体愁訴に対する鍼灸の意義についての議論を深め、実際に精神疾患患者に鍼灸を提供するための精神医療における新たな協力モデル(APネットワーク)を提案したい。

[SY112-1]精神科臨床における身体愁訴の精神医学的解釈と介入可能性

中村 元昭1, 吉田 勝臣2, 伊津野 拓司1,2 (1.昭和医科大学, 2.神奈川県立精神医療センター)

[SY112-2]Medically unexplained symptoms(MUS)の診療に東洋医学を活用する意義

増田 卓也1,2 (1.三井記念病院総合内科・膠原病リウマチ内科, 2.東邦大学医療センター大森病院東洋医学科)

[SY112-3]精神疾患患者の身体愁訴の緩和に役立つ鍼灸治療

松浦 悠人 (東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科)

[SY112-4]最新科学で解明された鍼灸のメカニズム

建部 陽嗣 (量子科学技術研究開発機構)

[指定発言]指定発言

山本 高穂 (NHKコンテツ制作局)