Presentation Information
[IL2]相分離生物学
○白木 賢太郎 (筑波大学 数理物質系)
タンパク質は水溶液中では基本的に集まりやすい性質を持つ。例えば、オボアルブミンとリゾチームや、免疫グロブリンとポリリシンなどは、水溶液中に混ぜると白濁する。この白濁した溶液を観察すると、液滴(ドロプレット)が見える。このドロプレットは流動性があり、分子が出入りしているので、液-液相分離した状態だとされる。ドロプレットの形成は可逆であり、例えば静電相互作用で安定化されている場合には塩化ナトリウムを少量加えるだけで透明の状態になる。そのため不可逆に形成されるタンパク質凝集とは区別される。
近年では、細胞内にあるタンパク質が液-液相分離した状態で機能しているという報告が相次いでいる。例えば、遺伝子の転写やタンパク質への翻訳、シグナル伝達の制御、酵素の機能の区画化、基質の貯蔵、アミロイドへの成熟など、多岐に及ぶ生命現象が全てドロプレットの形成と関連するとされてきた。
本講演では、相分離生物学と呼べる新しい分野の概略を紹介したい。生命現象の理解は、タンパク質の分子(一次構造)や立体構造(三次構造)のほか、集合体(五次構造)を仮定するとわかりやすくなる。それにあわせて、講演者が長年たずさわってきたタンパク質の溶液状態の制御の技術を紹介したい。タンパク質の液-液相分離や凝集は合理的に制御でき、食品やバイオ医薬品などの産業に広く応用されてきている。
近年では、細胞内にあるタンパク質が液-液相分離した状態で機能しているという報告が相次いでいる。例えば、遺伝子の転写やタンパク質への翻訳、シグナル伝達の制御、酵素の機能の区画化、基質の貯蔵、アミロイドへの成熟など、多岐に及ぶ生命現象が全てドロプレットの形成と関連するとされてきた。
本講演では、相分離生物学と呼べる新しい分野の概略を紹介したい。生命現象の理解は、タンパク質の分子(一次構造)や立体構造(三次構造)のほか、集合体(五次構造)を仮定するとわかりやすくなる。それにあわせて、講演者が長年たずさわってきたタンパク質の溶液状態の制御の技術を紹介したい。タンパク質の液-液相分離や凝集は合理的に制御でき、食品やバイオ医薬品などの産業に広く応用されてきている。