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[P30-14]新生児マススクリーニングを契機に脊髄性筋萎縮症と診断した児の家族に対する遺伝カウンセリング
○松田 圭子1, 木水 友一2, 西 恵理子1 (1.大阪母子医療センター 遺伝診療科, 2.大阪母子医療センター 小児神経科)
【はじめに】脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy; SMA)は、脊髄前角細胞の変性による筋委縮と進行性の筋力低下を特徴とする常染色体潜性遺伝形式の疾患である。すでにSMA-NBS (newborn screening)は複数の自治体で実施されている。大阪では2021年2月から当センターの拡大NBS事業として開始した。本事業を契機に確定診断に至った1例について、遺伝カウンセリング(GC)の経験を報告する。【症例】在胎39週1日、周産期異常なく近医で出生。日齢12に拡大NBSで陽性が判明、同日、小児神経科医師から電話で陽性通知を行った。日齢14に当センター初診、遺伝診療科も同席しGC後遺伝学的検査を実施、日齢19に確定診断(SMN1: 0コピー、SMN2: 3コピー)した。日齢20に精査の上未発症と判断し、小児神経科とともに結果説明、疾患の理解や治療方針についての意思決定を支援した。日齢21に核酸医薬、日齢29に遺伝子治療薬が投与された。無症状の同胞(1y10m)に対する両親の不安が強く、可能な対応を検討した上、小児神経科との診察及び遺伝学的検査を実施した。【考察】SMAは未発症段階も含め可能な限り早期の治療導入が望ましい疾患となった。拡大NBSを契機とした場合、正確な診断と早期治療のために、両親は突然、遺伝性かつ進行性疾患の説明と診断を受け、信じられない思いを抱えつつ、非常に限られた時間のなかで疾患の理解と治療の選択を迫られることになる。本症例では、小児神経科の早期治療を目的とした診療の場で、遺伝診療科として家族の戸惑いや葛藤を受けとめつつ必要な意思決定支援を模索した。両親の遺伝学的検査や治療薬対象制限間際の同胞への対応等多くの課題があり、情報が限られるなか悩みながら対応した。今後、事業の普及に伴い、全国的にもGCが必要な場面が増えると予想される。本症例の経験を踏まえ院内の安定かつ充実した体制について検討を重ねたい。