講演情報
[20]住居専用地域に立地する非住宅系用途の実態に関する研究― 観光的要素を有する鎌倉市佐助地域を対象として ―
○松本 望実1、野原 卓2、矢吹 剣一2、尹 莊植2 (1. 東京大学大学院 工学系研究科、2. 横浜国立大学大学院 都市イノベーション研究院)
キーワード:
住宅専用地域、第一種低層住居専用地域、非住宅系用途
鎌倉市佐助地域は第一種低層住居専用地域が指定されている住宅地でありながら、周辺の歴史資源・観光資源への来訪客の増加を背景として多種の非住宅系用途の建築物が見られる。それらはいずれも所有者や地域のアイデンティティが活かされた形態であり、特に近年はその数や用途種が増加傾向であった。これらの多くは2階建て兼用住宅の1階部分に設けられており、建物外観については、建物内に非住宅系用途が含まれていることの判別が難しく住宅に類似した形態と、反対に判別が容易であり地域に開かれている形態の双方が存在した。また佐助地域では地区計画等が定められていないが、目立った近隣トラブル等は見られなかった。その要因としては、所有者自身が地域の居住者としての立場から、運営形態や建物形態に関して自主的にコントロールを行っているためだと考えられる。第一種低層住居専用地域においては、非住宅系用途を含む建築物の形態を基本的に兼用住宅とする建築基準法上の規定により、自ずと所有者(兼居住者)と地域との関係性の構築が重要となるが、将来的にはそのような関係性が、「良好な住居の環境」と「用途の多様性」との両立に寄与するという可能性がある。