講演情報

[30]区分所有マンションにおける修繕積立金と経年減価の関係

○鈴木 雅智1、浅見 泰司2 (1. 横浜市立大学、2. 東京大学)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

区分所有マンション、修繕積立金、大規模修繕、経年減価、不動産市場分析

中古マンション売買データにおける修繕積立金額の情報を用いて、修繕積立金の水準と経年減価との関係を分析し、次の傾向が明らかとなった。①修繕積立金は築10年前後までは低い水準に抑えられており、その後、適切な水準に引き上げられる物件とそうでない物件に分かれる。②積立強度の低いマンションは、築浅時点では価格の下落はみられないものの、大規模修繕が適切に実施できないことが露見する築25-34年にかけて大きく価格が下落する。③積立強度を高めたマンションの資産価値は市場で十分に評価されておらず、築10年以降は概ね一貫して積立強度を高める便益は費用を下回るため、長期的には十分に積立強度を高めるインセンティブがあるとはいえない。居住・売却意向の異なる区分所有者が適切な修繕積立を行うインセンティブを有するためには、積立強度が高い・低いマンション間で築浅時点から継続して価格差が生じることが望ましい。適切な積立ができていないマンションでは、将来的に大規模修繕が実施できず資産価値が下落するという弊害が社会に認知されるとともに、修繕積立金額を含めた管理水準の情報が購入検討者に伝わる必要があることが示唆された。