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[53]昭和初期の仙台における風致地区の指定と都市計画上の位置づけ

○齋藤 駿介1 (1. 東急株式会社)
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キーワード:

風致地区、仙台、杜の都、旧法都市計画、郊外開発

本稿では昭和初期の仙台における風致地区指定の過程や目的を解明し、仙台都市計画における風致地区の位置づけと役割を考察する。都市計画全体の目的としては工業化が掲げられて市域拡張が進められる一方で、市街地の西部・北部を中心とする新旧市域の境界部にあたる丘陵地帯は開発から保護する必要があるとされ、歴史的風致の保護と自然風致の維持・育成を目的として風致地区指定が実施され、将来的には風致地区を公園として整備する計画も構想されていた。このように仙台の風致地区指定では積極的に自然風致を増進・育成する方針も掲げられ、都市計画法上の目的を超えた役割も期待されていて、「森の都」の良好な景観整備のために風致地区には大きな期待が寄せられていた。また、新市域は工業開発を中心とした都市化と良好な自然環境の保護がせめぎあう場であり、風致地区には両者を調停する役割が期待されていたと考えられる。以上を踏まえると、都市間競争の激化を背景として、産業都市への成長と「森の都」仙台の都市イメージの維持向上を両立させ、豊かな歴史的風致・自然景観と調和した近代的都市空間の形成が目論まれた点に仙台都市計画の特徴があったと考えられる。