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[76]多期間展開ゲームに基づく立地行動モデルを用いた事前復興インセンティブの最適設計

○増田 慧樹1、羽藤 英二1 (1. 東京大学大学院)
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キーワード:

動学的立地モデル、展開形ゲーム、居住地移転、事前復興

災害常襲地域における居住地の立地は,災害への暴露を変化させ,災害リスクに大きく影響する.災害リスク下での立地選択は,住民・民間開発者・行政といった複数主体の,将来を見据えた戦略的な意思決定を伴うため,立地均衡モデルにおいても,そのような動学的な相互作用を分析することが重要である.本研究では,動学ゲームの枠組みを用いて,住民と開発者の立地選択を記述する,立地均衡モデルを構築する.さまざまな利得パラメータのもとで均衡立地を計算し,住民と開発者の立地選択の相互作用を分析した.さらに,各プレーヤーが非協力的に行動した場合の立地均衡と,協力的な場合の立地均衡が異なることに着目し,均衡を社会的に最適な立地へ誘導するための,行政によるインセンティブを定式化した.分析の結果,住民のリスク認知が高い場合,開発者が防災を開発目的とすることにより,開発主導で住民を高台へと誘導できることが示唆された.また,住民が近い将来のみを考えて居住地を選択する場合,将来世代の被災リスクや都市発展を考慮する場合に比べ,住民と開発者の双方に対して,行政の補助負担は大きくなることが確認された.