講演情報
[106]自主集団移転の導入経緯と移転実態および住環境の評価に関する研究令和元年東日本台風後の宮城県丸森町を事例として
○荒木 笙子1、半田 一奎1、柴山 明寛2、姥浦 道生2 (1. 東北大学大学院工学研究科、2. 東北大学災害科学国際研究所)
キーワード:
自主集団移転、居住地移転、令和元年東日本台風、宮城県丸森町、防災集団移転促進事業
本研究の目的は、既存の防災集団移転促進(以下、防集)事業を用いずに住民主体の集団移転(以下、自主集団移転)を実施した、宮城県丸森町の台風被災後の事例について、既存事業のデメリットを補完できるという仮説に基づき、実態を把握することである。主に町役場と自治会長に対して調査し、既存事業と比較しながら自主集団移転の実施経緯と実際の移転実態を調査した。既存の防集事業はパッケージ化され支援内容が手厚く、広域で甚大な被害を受けた地域において効率的で有効な手段である。一方で事業の内容が過大になることや時間がかかる点について、自主集団移転では必要に応じた内容を選び、2年5ヶ月で移転が完了するなどクリアできていた。住民を代表して行政との調整にあたるキーパーソンの存在と、平時からの住民と行政の関係性の構築が欠かせず、行政は住民が必要とする内容や規模感に応じて適切な規模の支援を行うことで、住民にとって満足度の高い移転先団地の形成が可能となっていた。既存の防集事業は、要件緩和や住民が意思決定可能な仕組みの導入により、より柔軟で無駄のない事業を実施できる可能性がある。