セッション詳細

[1LS09]非侵襲代謝測定で迫る冬眠の制御機構

2025年3月17日(月) 12:40 〜 13:30
第9会場
司会:石井 均((有)アルコシステム)
共催:(有)アルコシステム
一部の哺乳類は冬になると基礎代謝と体温を能動的に低下させる「冬眠」という生理現象を示します。冬眠中の動物は酸素消費量を通常時の数%にまで低下させ、体温を環境温度に近づける一方で、傷害を負うことなく自発的に元の状態に戻ることができます。この「制御された低代謝」は、全身麻酔のような外的操作による受動的な低代謝とは異なり、「能動的低代謝」として注目されています。理論的には、冬眠を人間に誘導できれば全身のエネルギー需要を大幅に低下させ、限られた心肺機能でも生命維持が可能になると期待されています。

しかし、冬眠研究には、任意のタイミングで冬眠状態を誘導できないという大きな課題がありました。これに対し、私たちは2020年、視床下部に存在するQRFP産生神経(Qニューロン)を刺激することで、マウスにおいて代謝と体温を任意に低下させ、冬眠に酷似した状態を誘導することに成功しました。この状態をQIH(Q neurons-induced hypometabolism)と名付け、これを活用することで、冬眠の制御機構に関する詳細な研究が可能となりました。

本発表では、非侵襲的な呼気ガス分析技術を用いた実験データを交えながら、冬眠の制御機構や冬眠が生体に及ぼす影響についての最新知見をご紹介します。また、これらの研究成果が人工冬眠の実現や医療への応用にどのように貢献しうるのかについても展望し、冬眠研究の未来について議論します。

[1LS09-01]Unveiling the Mechanisms of Hibernation through Non-Invasive Metabolic Monitoring

砂川 玄志郎 (国立研究開発法人 理化学研究所 生命機能科学研究センター 冬眠生物学研究チーム)
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