APPW2025(第130回日本解剖学会/第102回日本生理学会/第98回日本薬理学会合同大会)

座長：上山 健彦（神戸大学・バイオシグナル総合研究センター・分子薬理研究分野）、任　 書晃（岐阜大大学院医学系研究科　生命原理学講座 生体物理・生理学分野）

蝸牛有毛細胞から一次聴覚野までの障害を含む感音難聴は、全人口の5%が異常を呈する最頻の感覚障害の一つである。しかし、根本的な治療法は今も存在せず、補聴器や人工内耳等を用いても生体本来が持つ鋭敏な機能を回復できない。感音難聴は、500出生当たり1人とされる遺伝性難聴と、加齢性難聴を代表とする後天性難聴に分類される。遺伝性難聴に対しては150種以上の病態が明らかになる一方で、後天性難聴は本邦で約1000万人が罹患するにも関わらず、その解明が立ち遅れている。さらに、難聴は乳幼児期の言語発達障害に直結するだけでなく、近年高齢者の認知症発症の主要因子であることも判明し、新たな治療法の開発は医療のみならず社会における喫緊の課題となっている。以上の背景から、本シンポジウムでは診断から治療にわたる最新の聴覚研究を幅広く紹介しながら、基礎医学研究に依拠した聴覚トランスレーショナル研究の展望を共有したい。