セッション詳細
[S9]シンポジウム9 神経疾患がある子ども本人との医療/ケアをめぐる協働意思決定の実践
2025年6月6日(金) 9:35 〜 11:35
第2会場
座長:岡崎 伸(大阪市立総合医療センター小児脳神経・言語療法内科) ,笹月 桃子(早稲田大学人間科学学術院,九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野)
子ども本人の治療やケアをめぐる意思決定支援の際には,乳幼児期・学童期・思春期・成人期にまたがる本人の成長及び発達特性に合わせ,家族や医療者による代理の意思決定から本人自身による意思決定へ移行する支援のパラダイムシフトが必要である.関わる周囲の大人は,目の前の幼い子どもの治療について代理で同意・判断することのみに留まらず,将来の自律性の確保を想定して本人が自身の意思を表明できる決定者となれるよう成長を促す長期的な視点が求められる.疾患の軌跡に沿いながら,成長過程において子どもが声を発することを促し,周囲の大人はその声を聞き取る努力が重要である.神経疾患診療においては,急性期の治療,抗てんかん発作薬やメチルフェニデート等の内服,未発症疾患の遺伝子診断,医療的ケアの開始,生命維持治療の導入・非開始など,倫理的にも様々に性質の異なる意思決定場面があり,私たちが取り組むべき課題は多く,またそれぞれに異なり得るであろう.本講演では,意思決定の力が十分とは言えずとも,自身の意向や希望を発することができる子どもたちとどのように話し合い,協働できるか議論する.意思決定能力が低下していく高齢認知症患者の意思決定支援と,子どもの意思決定支援に通底する共通課題を紐解きながら,子ども本人の意向をどのように捉え,医療に反映できるのか,共に考えたい. 子どもたちは疾患を持つことを選べたわけではない.しかし,その「疾患」と共に生きていく子どもたちの,その個別の経験としての「病」の道のりに伴走するものとして,私たちが果たすべき役割は何であろうか.慢性疾患や障害がある子ども本人との協働意思決定とは,具体的にどのような実践であり得るのか,疾患と治療の説明をするインフォームドコンセント/アセントの意義と限界,希望を見据えた最善の利益の追求など,より具体性をもって検討してみたい.今の時点から,まだ来ぬ未来までをも見据えて,子ども自身と対話をするとき,私たちに課せられた役割と責任とは何であろうか.共に考える機会になれば幸いである.
[S9-1]神経疾患がある小児・AYA世代への説明と意思決定支援における臨床医のジレンマ
○岡崎 伸 (大阪市立総合医療センター小児脳神経・言語療法内科)
[S9-2]意思決定とプロセス
○後藤 瑞希 (日本福祉大学福祉経営学部(通信教育部)医療・福祉マネジメント学科)
[S9-3]臨床倫理の観点からの子どもの意思と最善の利益
○稲葉 一人 (いなば法律事務所)
[S9-4]病とともにあるその人との対話について
○植竹 日奈 (特定非営利活動法人ケセラ)
[S9-5]「重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合いのガイドライン」2024年改訂版の理念
○笹月 桃子1,2 (1.早稲田大学人間科学学術院, 2.九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野)