シンポジウム
単体硫黄の精密活性化を読み解く結晶学:構造解析が拓く分子・高分子・錯体・無機材料の新展開
単体硫黄(S8)は、資源・環境・材料の観点から重要な元素である一方、その安定な環状構造ゆえに精密変換は容易ではない。本シンポジウムでは、触媒・電気化学・塩基・光・メカノケミカルという異なる活性化手法を横断し、単体硫黄の結合開裂、中間体生成、配位・重合・固相でのアニオン置換に至るまでを、結晶学的視点から統合的に議論する。領域計画では、有機、高分子、錯体、無機の各分野が連携し、反応効率や機構を多次元的に整理する「硫黄活性化マップ」の構築を目指している。
本シンポジウムでは、S1精密導入、高分子硫黄材料、含硫黄金属錯体、遷移金属硫化物を題材に、単結晶X線構造解析、粉末X線回折、分光計測、その場観測、局所構造解析を通して、「構造をどう見るか」と「構造に基づいてどう反応を設計するか」を議論する。硫黄化学そのものに加え、結晶構造・非平衡な準安定相・秩序的な格子欠陥など、結晶学が反応開発と材料機能化をつなぐ学理基盤であることを示したい。分野横断的な視点から、結晶学が元素活性化研究の新しい共通言語となることを提案する。
荻原 陽平(岐阜大学)
小林 裕一郎(大阪大学)
木田 拓充(滋賀県立大学)
塚田 学(千葉大学)
加藤 邦彦(岐阜大学)
渡辺 日香里(東京理科大学)
「惑星と生命の成り立ちを紐解く結晶学の視点」
近代結晶学の黎明期を支えた J. D. Bernal は、後世に多大な影響を及ぼした著書「宇宙・肉体・悪魔」において、身近な物質だけでなく生命、さらには宇宙も、原子・分子が織りなす秩序に基づいて普遍的に理解・操作されうるという、結晶学者ならではの科学観を提示した。
その提言から約百年を経て、結晶学を核とした構造科学は、「惑星や生命の成り立ち」を現に解き明かしつつある。地球外試料・地球深部試料の分析、極限環境・衝撃条件下における測定、古代生体分子の復元など、急速に発展する多様なアプローチは、放射光X線・X線自由電子レーザー・中性子線・電子線の特性を活かすことで、その探究をより精密かつ実証的なものにしている。
このように本学会が対象とする諸分野の射程は、太陽系規模の空間スケールから億年に及ぶ時間スケールへと広がりつつある。この現状を踏まえ、分野横断的な観点から研究者を招聘し、結晶学・構造科学を共通基盤として惑星と生命を形づくる物質の秩序とその変遷を展望する。
梅田悠平(京都大学・複合原子力科学研究所) 「天体の衝撃圧縮過程における原子配列変化」
癸生川陽子(東京科学大学・理学院) 「隕石有機物の分析」
坂巻竜也(東北大学・理学研究科) 「ケイ酸塩ガラス・メルトの構造解析」
原田彩佳 (筑波大学・生存ダイナミクス研究センター) 「多細胞進化・ソフトマテリアル・鉱物」
古池美彦(分子科学研究所・協奏分子システム研究センター) 「古代地球での時計タンパク質の分子形状進化」
無盡 真弓(北海道大学・理学研究院) 「天然マグマにおけるナノ結晶」
(五十音順)
先端計測技術が拓く新しい結晶学
近年、電子線やX線を用いた先端計測技術の発展に伴い、従来の方法では困難であった構造情報が得られるようになってきている。構造解析の対象は、微小結晶、非晶質の局所構造、さらには時間変化を伴う動的構造へと大きく広がっている。電子線回折法、透過電子顕微鏡法、PDF解析、X線自由電子レーザーを用いた時分割構造解析などの新しい手法は、従来の結晶学を拡張し、物理・化学・生物の各分野に新たな知見をもたらしている。本シンポジウムでは、これら先端計測技術を用いた研究を牽引する研究者を招き、今後の結晶学の可能性について議論するとともに、分野横断的な視点から結晶学の将来像を展望する。
尾瀬農之(北海道大学)
尾原幸治(島根大学)
山根宏之(光科学イノベーションセンター)
山元淳平(大阪大学)
米倉功治(理研/東北大学)
渡邉万三志(東北大学)
(五十音順)
