日本エンドオブライフケア学会 第9回学術集会

学術集会長挨拶

日本エンドオブライフケア学会 第9回学術集会

学術集会長 足立 智孝

(亀田医療大学 教授)

足立先生写真

 この度、202610月、日本エンドオブライフケア学会第9回学術集会をハイブリッド(つくば国際会議場とWEB(オンデマンド配信))で開催させていただくことになりました。

 日本エンドオブライフケア学会は201610月の設立以来「すべての人にいつかは訪れる死についてともに考え、最期までその人らしい生と死を支えることができるようなケア」、ならびに「愛する人々を見送った家族が生きることを支えることができるようなケア」のあり方を探求してきました。併せて「わが国独自の生活文化や価値観に根差したエンドオブライフケアの基盤となるような医療制度、地域ケアシステムの構築」を目指して、さまざまな実践、教育、研究活動を行ってきました。

 本学術集会は、学会設立10周年にあたる記念大会になります。そこで本学会が設立時から取り組んできた、私たち一人ひとりの「いのち」を最期まで生きる営み、ならびに遺された家族にとってその大切な人の「いのち」をつなぐ営みをエンドオブライフケアと捉え、本大会のテーマを『「いのち」をつなぐ営み-エンドオブライフケアの本質を探る-』としました。

 エンドオブライフケアの領域においては、医療・保健・福祉分野だけでなく人文社会科学分野等の研究も進み、学際的かつ多様な職種による様々な手法が開発・実践されるようになっています。しかし、どのような手法を用いようとも、あらゆるケアには必ず「言葉」が伴います。エンドオブライフケアにおける「言葉」は、様々な手法の補助的な役割のこともあれば、「言葉」自体が主要なケアとなることもあります。哲学者の井筒俊彦は、文字として表現される「言葉」のほかに文字では表現できない豊饒な意味のうごめきを「コトバ」と表しました。「コトバ」には、病者のそばにそっと寄り添う「沈黙」も含まれます。人の生と死に関わる場面においては、「言葉」では表現できない「コトバ」を介するケアも重要と思われます。本学術集会では、ケアの本質的要素である「言葉」や「コトバ」を介した「いのちの営み」について、多様な視点から討論する機会にしたいと考えています。
多くのご参加、心よりお待ち申し上げます。