講演情報
[P-005]漢方薬による高齢マウスの唾液分泌機能回復
○倉方 知樹1、近藤 祐介1、野代 知孝1、宗政 翔1、向坊 太郎1、細川 隆司1、正木 千尋1 (1. 九州歯科大学口腔再建リハビリテーション学分野)
【目的】
口腔乾燥症はカリエスリスクの上昇や歯周炎の増悪,粘膜の疼痛や義歯装着困難などを引き起こす。口腔乾燥症の発症には加齢に伴う唾液腺機能の低下もその一因として挙げられる。一方,近年漢方薬である人参養栄湯の抗老化作用が注目されている。そこで本研究では,人参養栄湯が高齢マウスの顎下腺に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
実験動物として,オスの老化促進モデルマウス(Senescence-accelerated mouse prone 1)を用いた。8か月齢から12か月齢まで,実験群(NYT群,n=7)には人参養栄湯(株式会社ツムラ)を混合した飼料(CE-2(日本クレア)+3%人参養栄湯)を,コントロール群(CTR群,n=7)には通常の飼料(CE-2)を投与した。その後, 顎下腺を支配動脈と導管を含めて摘出し,生理食塩水で灌流したEx vivo灌流モデル(0.3μMカルバコール(ムスカリン性アゴニスト,10分間刺激)),RNAシークエンス,リアルタイムPCR,免疫組織化学を行った。統計学的解析にはStudent's t-testを用い,α=0.05とした。
【結果と考察】
カルバコール刺激による唾液分泌量は,NYT群で有意に高値だった(p=0.017)。RNAシークエンスでは,サイトカイン生成や代謝,血管新生に関連する遺伝子,MAPK,IL-17,TNFのsignaling pathwayに関連する遺伝子などの発現がNYT群で有意に上昇していた。リアルタイムPCRでは,老化マーカー(p16,p21,p53)の発現量はNYT群とCTR群で同等だったが,炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6,TNF-α)および抗炎症性サイトカイン(IL-10)の発現量は,NYT群で有意に高値だった。一方,唾液分泌に関わるTransmembrane protein 16A,Aquaporine5,muscarinic cholinergic receptor 3の発現や局在は,リアルタイムPCRおよび免疫組織化学において,両群間で違いは認めなかった。以上より,人参養栄湯の投与により高齢マウス顎下腺における唾液分泌量が増加し,そのメカニズムとして免疫応答や細胞増殖,分化への作用の関与が示唆された。
(倫理審査委員会名:九州大学動物実験委員会 承認番号:22-024)
(COI開示:なし)
口腔乾燥症はカリエスリスクの上昇や歯周炎の増悪,粘膜の疼痛や義歯装着困難などを引き起こす。口腔乾燥症の発症には加齢に伴う唾液腺機能の低下もその一因として挙げられる。一方,近年漢方薬である人参養栄湯の抗老化作用が注目されている。そこで本研究では,人参養栄湯が高齢マウスの顎下腺に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
実験動物として,オスの老化促進モデルマウス(Senescence-accelerated mouse prone 1)を用いた。8か月齢から12か月齢まで,実験群(NYT群,n=7)には人参養栄湯(株式会社ツムラ)を混合した飼料(CE-2(日本クレア)+3%人参養栄湯)を,コントロール群(CTR群,n=7)には通常の飼料(CE-2)を投与した。その後, 顎下腺を支配動脈と導管を含めて摘出し,生理食塩水で灌流したEx vivo灌流モデル(0.3μMカルバコール(ムスカリン性アゴニスト,10分間刺激)),RNAシークエンス,リアルタイムPCR,免疫組織化学を行った。統計学的解析にはStudent's t-testを用い,α=0.05とした。
【結果と考察】
カルバコール刺激による唾液分泌量は,NYT群で有意に高値だった(p=0.017)。RNAシークエンスでは,サイトカイン生成や代謝,血管新生に関連する遺伝子,MAPK,IL-17,TNFのsignaling pathwayに関連する遺伝子などの発現がNYT群で有意に上昇していた。リアルタイムPCRでは,老化マーカー(p16,p21,p53)の発現量はNYT群とCTR群で同等だったが,炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6,TNF-α)および抗炎症性サイトカイン(IL-10)の発現量は,NYT群で有意に高値だった。一方,唾液分泌に関わるTransmembrane protein 16A,Aquaporine5,muscarinic cholinergic receptor 3の発現や局在は,リアルタイムPCRおよび免疫組織化学において,両群間で違いは認めなかった。以上より,人参養栄湯の投与により高齢マウス顎下腺における唾液分泌量が増加し,そのメカニズムとして免疫応答や細胞増殖,分化への作用の関与が示唆された。
(倫理審査委員会名:九州大学動物実験委員会 承認番号:22-024)
(COI開示:なし)