講演情報

[P-007]実験的な歯の喪失によるマウス腸内細菌叢と代謝物の変化

○横井 美有希1、畠山 理恵2、石田 えり2、松房 優菜1、岡本 美英子1、津賀 一弘2、吉田 光由1 (1. 藤田医科大学医学部歯科口腔外科学講座、2. 広島大学大学院医系科学研究科先端歯科補綴学)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】
 我々はこれまで,実験的に歯を喪失させたマウスを用いて歯の喪失と認知機能低下について報告してきた1)。しかしながら,そのメカニズムに関しては不明な点が多い。近年,腸内細菌叢と全身疾患の関連2)について報告されており,腸脳相関など腸内細菌叢に注目が集まっている。そこで本研究は,腸内細菌叢および代謝物に着目し,実験的な歯の喪失が認知機能および腸内細菌叢の変化に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 実験動物に,SAMP8マウス(雄性,2ヵ月齢)を用い,実験群は3ヵ月齢で両側上顎大臼歯を抜歯し,対照群は麻酔のみ行った。9ヵ月齢で行動実験(Barnes Maze test)を実施し認知機能を評価した。その後糞便を採取し,16S rRNAアンプリコンシークエンスおよび腸内細菌代謝物を標的としたメタボローム解析を行った。
【結果と考察】
 Barnes Maze testの結果,ゴールであるエスケープホールへたどり着く時間は実験群で長くなる傾向が見られ,エスケープホールを探索する時間や通過する回数の割合は実験群で低下していた。腸内細菌叢の解析結果では,α多様性には有意差を認めなかったものの,β多様性に有意差を認めた。メタボローム解析の結果,対照群に比較して実験群では一部のポリアミン代謝物の変化を認めた。
 本研究の結果から,実験的な歯の喪失は腸内細菌叢およびその代謝物を変化させることが明らかとなり,歯の喪失が認知機能低下に及ぼすメカニズムの理解につながる可能性がある。
【参考文献】
1) Oue H, Hatakeyama R, Ishida E, Yokoi M et al., Experimental tooth loss affects spatial learning function and blood-brain barrier of mice. Oral Diseases, 2023; 29, 2907-2916.2) Takagi T, Inoue R, Oshima A, Sakazume H et al., Typing of the Gut Microbiota Community in Japanese Subjects. Microorganisms. 2022, 10(3), 664.
(COI開示:なし)
(広島大学動物実験委員会承認番号:A20-129)