講演情報
[P-009]日本人成人集団における根面う蝕の前向きコホート研究
○杉原 直樹1、小川 廣純1、鈴木 誠太郎1、今井 光枝1、石塚 洋一1 (1. 東京歯科大学衛生学講座)
【目的】
日本の急激な高齢化に伴い高齢者は増加している。一方で近年における高齢者の現在歯数の増加は顕著である。今後日本において8020運動や歯科口腔保健推進法,健康日本21などの保健政策の推進により,高齢者の残存歯数が増加することによって,根面う蝕の発病リスクはさらに増加しその予防の必要性もさらに高くなると考えられる。日本人成人に対して根面う蝕の前向きコホート研究を実施し,罹患率を明らかにすると共に,発病に関連する要因についての曝露を調査し,根面う蝕の予防のために発病のリスクファクターを明らかにすることである。
【方法】
2016年と2018年の7~8月に大企業の都内本社従業員のうち,同意を得られた者に対して口腔内診査および自記式質問紙調査を実施した。2回の調査において前向きコホート集団となった332名を対象に解析を行った。口腔診査は歯冠う蝕,根面う蝕,歯周組織および口腔清掃状態別にそれぞれ1名の歯科医師(合計3名)により診査を実施した。口腔診査の基準はWHOの口腔診査法(第5版)に準拠して実施した。水平位チェアと口腔内ライトを用いて実施した。
【結果と考察】
ベースライン時の口腔内状況では,根面う蝕有病者率は15.7%,一人平均0.36歯を所有していた。また歯肉退縮の有病者率は82.5%,一人平均現在歯数は6.4歯であった。2年間の根面う蝕累積罹患率は,男性で13.3~39.6%,女性で0~46.2%と年齢群が高くなるにつれて,累積罹患率も高くなった。2年後の根面う蝕罹患(増加)を目的変数とした時に性別と年齢で調整した多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行った結果,ベースライン時の歯冠部DMF歯数(オッズ比:1.068)および歯肉退縮歯数(オッズ比:1-5歯2.024,6-10歯6.053,11歯以上8.170)が高いと罹患のリスクが高く,かかりつけの歯科医がある者(オッズ比:0.537)の方が罹患のリスクが低いことが示された。 日本人の根面う蝕の有病および罹患状況を明らかにするためには,個々の集団の調査では限界があり,国家統計調査を実施することが必要である。また根面う蝕の予防のためには,最大のリスクファクターである歯肉退縮の発生を極力抑制することが重要である。
(COI開示:なし)
(東京歯科大学倫理審査委員会承認番号806)
日本の急激な高齢化に伴い高齢者は増加している。一方で近年における高齢者の現在歯数の増加は顕著である。今後日本において8020運動や歯科口腔保健推進法,健康日本21などの保健政策の推進により,高齢者の残存歯数が増加することによって,根面う蝕の発病リスクはさらに増加しその予防の必要性もさらに高くなると考えられる。日本人成人に対して根面う蝕の前向きコホート研究を実施し,罹患率を明らかにすると共に,発病に関連する要因についての曝露を調査し,根面う蝕の予防のために発病のリスクファクターを明らかにすることである。
【方法】
2016年と2018年の7~8月に大企業の都内本社従業員のうち,同意を得られた者に対して口腔内診査および自記式質問紙調査を実施した。2回の調査において前向きコホート集団となった332名を対象に解析を行った。口腔診査は歯冠う蝕,根面う蝕,歯周組織および口腔清掃状態別にそれぞれ1名の歯科医師(合計3名)により診査を実施した。口腔診査の基準はWHOの口腔診査法(第5版)に準拠して実施した。水平位チェアと口腔内ライトを用いて実施した。
【結果と考察】
ベースライン時の口腔内状況では,根面う蝕有病者率は15.7%,一人平均0.36歯を所有していた。また歯肉退縮の有病者率は82.5%,一人平均現在歯数は6.4歯であった。2年間の根面う蝕累積罹患率は,男性で13.3~39.6%,女性で0~46.2%と年齢群が高くなるにつれて,累積罹患率も高くなった。2年後の根面う蝕罹患(増加)を目的変数とした時に性別と年齢で調整した多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行った結果,ベースライン時の歯冠部DMF歯数(オッズ比:1.068)および歯肉退縮歯数(オッズ比:1-5歯2.024,6-10歯6.053,11歯以上8.170)が高いと罹患のリスクが高く,かかりつけの歯科医がある者(オッズ比:0.537)の方が罹患のリスクが低いことが示された。 日本人の根面う蝕の有病および罹患状況を明らかにするためには,個々の集団の調査では限界があり,国家統計調査を実施することが必要である。また根面う蝕の予防のためには,最大のリスクファクターである歯肉退縮の発生を極力抑制することが重要である。
(COI開示:なし)
(東京歯科大学倫理審査委員会承認番号806)